
横型p-n接合を用いた光電子素子の高密度集積化
1.はじめに
半導体において、p-n接合(n型の領域とp型の領域とが隣り合う部分)は、 光電子素子の基本的な構造です。私たちは、p-n接合を形成する新しい方法を開発しました(図1)。
これは、あらかじめ2つ以上の面が現れるように段差加工を施した基板上に両性不純物(条件によってn型にもp型にもなる不純物)を添加して化合物半導体材料の層を形成する方法です。基板の結晶方位に応じて、n型の領域とp型の領域とを1回の結晶成長で同時に形成することができ、その境界に横型p-n接合が形成されます
[1]。
このような方法で作製する横型p-n接合は、次世代素子として有望な、以下のような特徴を持っています。
1.1回の結晶成長で、1種類の不純物を用いるだけでp-n接合を形成できるため、作製が容易。
2.接合部の面積を、不純物を添加する層の厚さで制御することができるため、従来方法に比べて何桁も薄く(究極的には1原子層の厚さにまで)できる。
3.n型領域とp型領域とが試料の同じ側にあるため、電極も同じ側に形成することができる。
4.電気的に絶縁性の基板を用いることができるため、同じ基板上に形成した他の素子との電気的分離が容易。
5.不純物を添加していない層でp-n接合をはさんで電流の漏れを減らすことができる。
私たちは、こうした特長を持つ横型p-n接合を用いた種々の素子を提案し試作してきました。そして最近、高密度の発光ダイオードアレイの作製に成功しましたので、これらについて概要を述べます。
2.横型接合デバイス
2-1 発光ダイオード
従来型の発光ダイオード(LED)は表面の大部分が電極で覆われる構造であったため、光がさえぎられ効率が低下していました。これに対して、横型接合LEDでは、光が電極にさえぎられるということが起きません。私たちは、横型接合LEDを試作し、このようなLEDが得られることを実証しました[2]。
2-2 レーザ
横型p-n接合を用いて、レーザを作製することもできます。LEDと同様の構造の上下に多層膜の反射鏡を形成して共振器構造を作成し、基板に垂直な方向に光を出射する面発光レーザを作製しました[3]。
この素子は、室温で 2.3 mA以上の電流を流すことによりレーザとして動作することを確認しました(図2)。
2-3 光検出器
空間光通信システムにおいては、光を受ける光検出器も重要な素子です。高速通信のためには光検出器の応答速度を上げることが求められますが、そのためには、素子の容量を下げることが必要です。横型p-n接合では、接合部分の厚さを非常に薄くできるという特長を利用して素子の容量を下げ、高速で動作する光検出器が得られます[4]。
3.横型接合LEDアレイ
従来の作製方法では1200 dpi(1インチ=約25 mmあたりの素子数)のLEDアレイが限界でしたが、横型接合を利用すれば、より高密度のLEDアレイを作製することが可能です。図3に、2400
dpiのLEDアレイからの発光の様子(発光波長670 nm)を示します。表面電極に光をさえぎられず、高効率の発光が得られています。
4.おわりに
多くの優れた特長を持つ横型p-n接合を利用して、今後さらに高性能な空間光通信用デバイスの開発を進めてゆきます。
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