音声翻訳通信研究所プロジェクト終了

音声翻訳技術の応用研究を通して感じたこと

松下電器産業(株) 先端技術研究所主任研究員(前 ATR音声翻訳通信研究所 第三研究室) 脇田 由実



 ATR音声翻訳通信研究所に3年2カ月お世話になり、音声認識および言語翻訳に関する研究に取り組ませていただきました。97年末に出向元である松下電器先端技術研究所に戻りましたが、その後、音声翻訳通信研究所および国際電気通信基礎技研究所のご協力により、携帯型PC上でリアルタイム動作が可能な日英双方向音声認識システムの開発を行ないました。新聞発表なども行い、多くの方々にご評価いただく機会を得ることができました。


 現在、この評価結果をもとに、音声翻訳技術を広く一般のユーザに使用いただく可能性を検討しております。この活動を通して、機械による即時通訳という夢のような世界が目の前で実現されることに対して、多くの人に非常な関心を持っていただきました。音声翻訳技術が新たな文化として日常生活の中に入り込む日が近いことを実感していただけたと思います。特に、「携帯性」「処理の即時性」「あいづちや少々の聞き間違いに対する処理の柔軟性」などは高い評価をいただけたと感じました。しかし一方で、誰でもどんな環境でも使用できる、最低限必要な内容は正しく伝えてくれるなど、広く使用されるための必要条件を満たすには、基本技術と応用展開の両面から、少し視点を変えた研究開発が必要であることも分かりました。
 今後は、基本技術の高性能化に取り組み成功された経験を生かして、さらに性能の確実な保証を念頭に基本技術の確立に寄与していただくことを期待いたします。