



音声翻訳通信研究所プロジェクト終了
音声翻訳研究所における音声の研究
グリフィス大学教授(前ATR音声翻訳通信研究所 第一研究室)クルディップ・K・パリワル
私は1994〜1995年にかけて音声翻訳通信研究所(ATR/ITL)をはじめて訪問しましたが、それより以前からATR/ITLの音声翻訳プロジェクトの存在はすでに知っていました。この独自の挑戦的プロジェクトに、ATRは他に先駆けて取り組み、ある言語(たとえば日本語)の音声を、別の言語(たとえば英語)の音声に翻訳するシステムの開発を目指していました。これは音声認識、言語翻訳、音声合成およびシステム統合を含む多くの研究分野に関係し、多くの学問領域にわたるプロジェクトです。最近、ATR/ITLは音声翻訳システムのプロトタイプの実演に成功しました。これは現在、音声翻訳の分野をリードしているシステムです。私自身もATRの研究とスタッフの質の高さに強い感銘を持ち、通算5回、短期ながらも毎年欠かさずATRへの訪問を重ねてきました。
ATRは国際的な研究協力に力を入れており、外国人の研究者や科学者がATRに来て研究を行なうよう働きかけています。したがって、ATRでは働く人員のかなりの数を海外から迎えています。これが、非常に協力的でありながら、それでいて互いに競い合って研究する雰囲気を醸し出しています。ATRの研究スタッフは非常に意欲的、勤勉、知的であると共にイマジネーション豊かです。実際、私にとっても、彼らは非常に協力的で頼れる存在でした。私は、ATRで音声認識分野において多くの研究スタッフと協力し、よい成果を得ることができました。
ATRは、音声認識と合成の分野で、国際的に高く評価されている研究機関です。音声認識の分野では、主に音響モデリング技術、話者適応技術および言語モデリング技術等の発展に貢献してきました。また、データ駆動型の音声合成モデルは、多くの国際的な研究センターで使われています。ATR/ITLの研究者は、国際的に評価される研究論文誌や国際会議でその研究成果を定期的に発表しています。それらの研究の貢献度は国際的なコミュニティで広く認められています。また様々な一流の技術委員会/ボードのメンバーも多く輩出し、国際会議の技術セッションの座長として頻繁に招聘されています。ATRは音声研究の分野において、世界の技術水準の向上を担ってきたといえますし、私としては、将来的にもそれが続いていくことを願ってやみません。