音声翻訳通信研究所プロジェクト終了

音声翻訳における音声翻訳通信研究所との共同研究


AT&T研究所 副社長 ローレンス・ラビナー



 1998年初頭にAT&Tと音声翻訳通信研究所(ITL)の間で音声翻訳に関する共同研究が開始されました。1998年中期には、米国と日本におけるオペレータの支援に焦点を絞った、顧客サービス分野における英日双方向翻訳システム作成を目的としたプロジェクトが選定され、それに向けた技術研究が始められました。18カ月のプロジェクト期間、AT&TのHiyan Alshawi博士とITLの中村 篤主任研究員の両名が共同でその運営に当りました。1999年12月のプロジェクトに関する最終報告をもって、この目的が達成されたことを、ここに報告できることは私の喜びとするところです。
 総合的な目的達成のため、一連のバイリンガルデータベースおよび音声認識、音声合成、言語翻訳、システム間通信の各システムを構成する要素を作成することを含め、両研究所はいずれも当初計画された一連の日程に従って作業を遂行しました。その具体的な成果は、プロジェクトにおける、より大きな意味での目的、という観点から捉える必要があります。つまり、これらの成果には、実用的な音声言語システムを構成する要素技術の先端的研究およびこのようなシステムがネットワーク上での相互オペレーションによって広く使われていくための標準的な通信アーキテクチャ構築が含まれていました。
 顧客サービスの領域を選択したことで、研究者は、実際の電気通信サービス利用者から収集した数多くの実データに対し、開発された応用可能な方式を実証することが可能になりました。プロジェクトでは、英日翻訳に対するエラー率を半減させる全自動翻訳モデル・トレーニング・アルゴリズムの新規バージョンもAT&T研究所で開発されました。
 システム全体の構築という本来の目的のため、それぞれがそれぞれの言語の認識、翻訳および合成システムの構築に集中するため、互いに開発成果の共有と再利用を可能とすることが必要でした。また、それぞれが各自の(それぞれ固有の)テクノロジを展開していくため、システム・アーキテクチャ全体の要件として、システム間相互通信手段としてIPテクノロジとの互換性が条件とされました。これらの条件を満たすインタオペレーティング・プロトコル(TIOP)はAT&Tが設計したものを、それぞれが実装しました。最終的な結果として、アメリカ・ニュージャージのAT&T研究所と京都のITL、両サイト間で、IPプロトコルを用いた双方向音声言語翻訳システムのデモンストレーションを行い、十分実用になりうることを示しました。総合的に見て、あらゆる目標と計画日程を達成したこの共同研究プロジェクトは、多大な成功を収めたものと評価しています。