波及性ある研究の更なる発展に期待する





郵政省通信政策局 技術政策課課長 原田 祐治



 昭和60年に基盤技術研究促進センターの出資により民間における基盤技術研究を支援する制度が創設されましたが、この制度の適用を受けた最初の試験研究会社としてATRの4研究所が設立された訳であります。
 その後、これら研究所では着実な研究が進められ、国内はもちろん、国際的にもその成果が高く評価されるところとなっております。
 これら4研究所のうち、(株)エイ・ティ・アール視聴覚機構研究所と(株)エイ・ティ・アール自動翻訳電話研究所については、この3月で7年間の試験研究期間が修了し、その成果の一部はそれぞれ新しい研究プロジェクト(視聴覚機構関連プロジェクトは昨年発足済み)に継承されることとなった訳でありますが、この間、日夜研究に励んでこられた淀川・榑松両社長及び研究者の方々、ならびにこれらの研究を支援していただいた多くの関係者の方々に深い敬意を表したいと思います。
 よく使われる表現として、通信には、「いつでも、どこでも、誰でも(誰とでも)通信できる機能」が求められると言われますが、上記の2研究所の研究テーマは、「誰でも(誰とでも)できる通信」を実現するための一つの方法として、研究のアプローチは異なっているものの、人と機械との対話の方法を身体のメカニズム(視聴覚機構、又は、音声認識・発声機構)に学んで探求して行こうとする試みで共通性があるようにも見られます。
 21世紀に向けて、情報通信は、社会・経済の基盤としての重要性を増して行くのみでなく、高齢化や国際化の進展する中で、豊かでゆとりある生活の実現のために我々の日常生活にますます深く根づいてくるものと考えられますが、上記のような分野の研究の成果は、人と通信との係わりの上で様々な応用性・波及性をもたらすものと考えられます。
 通信に求められる前記の機能に加え、「人にやさしい通信」を実現して行くためにも、ATRの新研究プロジェクトにおいて様々な波及性を秘めた研究が更に活発に推進されることを心から期待したいと思います。