



ATRの一層の飛躍を期待する
基盤技術研究促進センター 出資部長 田口 悟
高度情報社会の基盤である電気通信の基盤技術研究については、その充実強化がかねてから強く要請されています。ATRにおける研究はまさにこの要請に応えるものであって、その成果に大きな期待が寄せられています。当センター出資案件中のビッグプロジェクトたるATR各社の研究活動が順調に進んでいることは誠に喜ばしく、かつ心強い限りです。
さて、ATRのプロジェクトのうち、本年3月、(株)エイ・ティ・アール視聴覚機構研究所及び(株)エイ・ティ・アール自動翻訳電話研究所における研究がそれぞれ7年間の研究期間を経て予定どおり終了しました。視聴覚機構研究所においては、人間の視聴覚や認知の機能・メカニズムを解明し、人間中心のマンマシンインタフェースを開発していくための基礎研究が、また自動翻訳電話研究所においては、将来の国際通信に必要な自動翻訳電話システム構築のための音声認識、機械翻訳、音声合成等の重要技術についての基礎研究が進められてきました。これらの研究成果は数多くの特許、ソフトウェア等として結実しており、今後の応用展開の礎が築かれたところです。さらには広範かつ活発な学会・国際会議での成果発表を通じて、その研究成果は我が国のみならず国際的にも高く評価されていると聞いています。また本年1月には日米独3ヵ国を結ぶ自動翻訳電話の実験が成功裡に行われ、その模様がマスコミでも大きく取りあげられたことは記憶に新しいところです。あらためて両研究所での研究に携わってこられた方々のこれまでのご努力に深く敬意を表する次第です。
本年3月には、自然な話し言葉の音声翻訳通信を行うための基礎研究を行う(株)エイ・ティ・アール音声翻訳通信システム研究所が設立されました。この上は、研究継続中の(株)エイ・ティ・アール通信システム研究所、(株)エイ・ティ・アール光電波通信研究所及び(株)エイ・ティ・アール人間情報通信研究所共々、さらに活発な研究活動が進められ、すぐれた成果をあげられるよう期待いたします。
電気通信分野は技術先導的要素が強く、高度情報社会の進展の中で今後とも情報通信技術に関する研究開発の一層の充実が望まれています。その意味でATRに期待される役割は大きいものがあります。ATRが関西文化学術研究都市の中核として、21世紀に向け、電気通信技術の多様な分野で引き続き世界をリードする創造的研究活動を進められるよう祈ってやみません。