ATRに期待する





(財)関西文化学術研究都市 推進機構 理事長 小林庄一郎



 このたび、(株)国際電気通信基礎技術研究所が、関西文化学術研究都市における最初の中核施設として、精華・西木津地区の一画に完成をみましたことを心からお祝い申し上げます。本都市建設の推進に携わる者としても、まことに喜ばしい限りに存じておりますが、これもひとえに日裏社長をはじめ関係の皆様方の並々ならぬご努力の賜と深く敬意を表する次第であります。
 貴研究所が、人間主体の通信ネットワークや自動翻訳システム、理想的なマン・マシン・インターフェース等をテーマとする、多様な電気通信分野の研究に取り組もうとされておりますことは、21世紀に向けて、いわば技術と文化の融合した、人間味溢れる豊かな高度情報社会を築くうえで、まことに意義深いことであると存じます。また、産・官・学が集う自由な研究環境をつくり、人間科学・情報科学をはじめとする幅広い分野の学際的な基礎研究を踏まえて、新しい発想に基づく独創的な研究を進める試みこそ、まさに名実ともに当関西文化学術研究都市のパイオニア・プロジェクトと称するにふさわしいことと申せましょう。
 ご承知の通り、本都市は昨年来本格的な建設段階に入っており、とくに精華・西木津地区においては懸案の文化学術交流施設につきまして、近々官・民の共同出資による株式会社を設立し建設準備を進める予定となっておりますし、その周辺に立地する各企業の研究所も計画を固めつつあるほか、国際高等研究所や国立国会図書館関西館なども実現へむけて着実に前進をみております。また隣接する高山地区では、先端科学技術大学院が創設準備中であり、さらに津田地区ではイオン工学センターが着工の運びとなるなど、本都市建設の槌音がいよいよ高まってまいりました。
 このうえともナショナルプロジェクトとして、産・官・学の総力を結集して21世紀の国際社会に貢献し、人類の資産ともなりうる諸施設の建設を進めてまいりたいものと存じますが、そうした機運を一段と盛り上げるためにも、パイオニアたる貴研究所への期待は、まことに大なるものがあると存じます。貴研究所が、優れた成果をあげられ、ATR、ひいては関西文化学術研究都市の名を世界に高からしめられんよう心より祈念いたしまして、私のお祝いのことばとさせていただきます。