研究の更なる発展を誓う

代表取締役副社長 研究企画本部長 葉原 耕平



 この小論の表題を、はじめは『本格的な研究活動始動の意義』などと考えてみました。それは新研究所社屋が完成し、研究環境の本格的整備が計られるからという単純な発想によるものでした。しかし、そのうちにこれが必ずしも適切な表現ではないことに気付いたのであります。設立後三年間を過ごした大阪のツイン21ビルにおいても研究の大半は既に本格化していたからであります。それはひとえに関係の方々の深いご理解とご支援、そして研究者の努力・熱意によるものでありました。研究全体を預かる立場からあらためてお礼申し上げる次第であります。
 したがって、新しい研究所が完成したからと言って研究の中身が直ちにドラスティックに変ったり飛躍的に進展したりすることは恐らく有り得ない事と思っております。むしろ暫くのあいだ移転に伴う研究の足踏みが懸念されるところであります。
 そうは申しますもののこれまでは暫定研究所なるが故の制約もありましたし、何よりも大変手狭になり限界に近くなっておりました。今回、新研究所が完成したのはまさにそのような時期であります。最も喜ばしい事の一つは暫定研究では物理的に不可能であった特殊な研究施設も今後は設置できるようになったことであります。一方、これまでは暫定と言うことで研究がやりにくいこともあろうと周りの方々も大目に見ていただいていたところがあったやもしれません。しかし、今日からは違います。こと建物に由来する言い訳の種は無くなりました。
 京阪奈丘陵の緑濃い落ち着いた環境の中に完成した立派な建物に負けない、いやむしろそれを上回る研究を進め、建物同様揺るぎないATRとして人類の幸福にいささかなりとも貢献していくことが私たちの使命と心得ております。関係各位の変わらぬご叱責、ご鞭撻をあらためてお願い申し上げます。