ATRの開所を迎えて

代表取締役社長 日裏 泰弘



 ATRは、昭和61年春に設立以来約3年間、大阪市内の暫定研究所において、研究活動を推進して参りましたが、このたび漸く関西文化学術研究都市の第一号研究機関として本研究所の開所を迎えられることとなりました。これもひとえに関係各界から寄せられたご支援とご協力の賜であり、ここに厚くお礼を申し上げます。
 さて、これからATRにとって特に期待されているのは、独創的な基礎研究の推進であります。これは、ATRが高く掲げた理念でもあり、その道がいかに遠く険しくとも、これを超克し、世界に貢献する研究成果をあげることが本来の使命であります。そのためには、恵まれた自然環境やゆとりある空間と最新鋭の研究設備を備えた建物とともに、更に研究をインカリッジする組織や環境づくりが必要であります。この機会にあらためて研究者の自由奔放かつ大胆な発想や、すぐれた直観力と感性的な考え方をさらに伸ばすための有効なしくみを求めながら、独創性の発揮に相応しい研究風土を築き上げて参ります。
 また、異質の文化や価値観から生まれる発想に絶えず触れる機会を持つことが新たな発想に大きな刺激ともなるため、外国の研究者の受け入れや国際会議の開催などをさらに積極的かつ活発に進めて参ります。
 ATRでは、多くの企業はじめ各界から研究者が集い、その異なる業種や多彩なキャリアを相互に活かしながら、研究に専念しております。研究所の生命である「人」の確保に重点をおき、これからもリスクの大きい冒険的、先駆的な基礎研究に賭ける若い力を結集し、常に活気溢れる研究所づくりをめざして参ります。更に国内外の関係研究機関との協力関係を緊密にしながら、総力をあげて研究活動を推進して参りたいと存じます。今後とも関係各位のご支援とご鞭撻を切にお願い申し上げる次第であります。