創立1周年を祝して
社団法人 関西経済連合会 会長 日向 方齊
(株)国際電気通信基礎技術研究所グループの創立1周年を心からお祝い申し上げます。
昨年4月の設立以来、資金集めや研究者の増員等研究体制の整備を進めながら専門の研究に着手、学界に多数の論文を発表するのみならず、既に数件の特許を出願中と聞いております。幹部研究者にはそれぞれの分野でトップ級の方を集めておられますので、私も立派な成果が出ることは確信しておりましたが、これ程早いとは思いませんでした。改めて、日裏社長はじめATRの皆さま方のご努力に深く敬意を表します。
さて、わが国経済は、急激かつ大幅な円高の下で抜本的な産業構造の転換を迫られており、各企業とも体質改善、転換のため、先端的分野への進出、技術開発等懸命の努力を続けております。電気通信関係は、これからもっとも成長が予想される重要な分野でありますから、産学官共同による一大ナショナル研究センターとして、産業界のATRに対する期待は極めて大なるものがあります。ATRにおかれましては、今後とも産業界との交流を密にして研究を進めて頂きたいと思います。
関西文化学術研究都市の建設は、昨年大きく前進いたしました。関係省庁連絡会議による都市建設基本方針の決定、全体の企画、推進にあたる財団法人関西文化学術研究都市推進機構の設立、建設促進議員連盟の発足等に加え、下河辺部会長を中心に推進協議会企画部会において関西学研都市について新しい理念を盛り込んだ「新文化首都の基本構想」がまとめられました。この基本構想については、昨年末総理はじめ関係の政府、自民党首脳の方々にご説明し、ご了解頂きました。
本年は、税制上の特別措置を含む建設促進法を議員立法により制定して頂き、関西学研都市を名実ともにナショナルプロジェクトとしたいと考えております。
ATRは、関西学研都市の中核施設第1号として昭和62年度早々には工事をはじめますが、永年関西学研都市の建設を推進してきました私どもとしては誠に喜ばしい次第であります。
本年は、その他の中核施設についても、国際高等研究所の将来構想が具体化し、また、第二国立国会図書館については京阪奈丘陵設置が適当との調査会報告がまとめられる予定であり、さらに第二理化学研究所、総合芸術センターについてもこれから調査がはじめられる等着実に前進していくと思います。
京奈バイパス、第二京阪等交通網の整備も着々進んでおり、関西学研都市の建設は序々に軌道にのってきました。
関西国際空港も今年から工事がはじまりました。関西国際空港と関西学研都市の本格的建設がはじまる本年は、関西ルネッサンス元年ともいうべき記念すべき年であります。
わが国は巨額の貿易黒字をもつ経済大国として、基礎研究の分野においても経済力に相応しい貢献をするよう世界各国から求められております。
ATRにおかれましては、立派な研究所を建設し、世界中から優秀な研究者を招き、名実ともに世界一の国際的基礎研究所として、素晴らしい業績をあげられますよう祈念いたしましてお祝の言葉といたします。