ATR創立10周年を祝して




基盤技術研究促進センター 会長 豊田 章一郎




 創立10周年を迎えられ、心よりお祝いを申し上げます。
 ATRをこれまで支えてこられた関係者の方々のご努力に対し、この場をお借りして深く敬意を表する次第です。
 おかげさまで、私ども基盤技術研究促進センターも、昨年10月に創立10周年を迎えることができましたが、私どもとほぼ歴史を共にされてきた貴社がここに同じ節目を迎えられたことは、喜びにたえません。
 この10年を振り返りますと、旧ソ連、東欧諸国を始めとする共産主義経済の崩壊、中国・ASEAN等アジア諸国の急速な経済発展などにより、世界の市場の枠組みが日々刻々と変化してまいりました。また、他方では、地球環境問題など、世界的な課題が次々と生起してきております。また、電気通信分野に目を転じますと、携帯電話・ポケベル等による移動体通信が人々の生活の一部となり、インターネット等のコンピュータ・ネットワークが爆発的な普及を見せるなど、通信メディアの多様化や融合が全世界的に目覚ましく進行しております。
 これまでの既成概念が通用しなくなりつつあるこれらの状況の中で、我が国は経済大国にふさわしい国際貢献を行うことが内外より強く求められております。我が国が安定的で均衡のとれた経済発展を遂げ、豊かでゆとりある国民生活を実現していくとともに、こうした国際社会からの要請に応えていくためには、先端的な技術開発分野においても国際的な貢献を行っていくことが極めて重要であると考えます。
 ATRは、この10年の間、電気通信の幅広い分野において、さまざまな角度から研究を進められ、我が国の基盤技術の向上に大きく貢献されるとともに、学術的にも世界的に高く評価される成果を上げてこられました。今後、マルチメディア通信が実現するであろう、さまざまな社会生活の変革において、ATRに期待される役割がますます大きなものとなることは、容易に想像ができるところです。
 当センターといたしましては、ATRが我が国の電気通信分野における基盤技術研究の最大の拠点の一つとして、日本のみならず世界の電気通信の発展に更なる貢献をされることを強く期待するとともに、当センターを代表するプロジェクトとして、これらの研究開発を引き続き支援していくことにより、民間の基盤技術研究の促進という当センターの目的の達成に努めてまいる所存であります。
 最後に、ATRがますます発展されることを心より祈念いたしまして、お祝いの言葉とさせていただきます。