これからのユビキタスネットワーク社会

Ubiquitous Network Society


株式会社国際電気通信基礎技術研究所 代表取締役社長 畚野 信義



 最近「ユビキタス」が姦しい。
 ユビキタスはラテン語で、「何処にでもある」というような意味だそうである。何処にでもあるネットワークを通して、誰でもが何処のコンピュータやデータでも使って、何でもやりたいことをやり、知りたいことを知り、何処の誰とでも何時でも自由に連絡できるというような社会を意味しているようであり、今の時点ではそのような仕組みを持った社会を造ることを願って、この表現が使われているというのが正確であろう。
 20年以上前、「何処でも、誰でも、誰とでも」というキャッチフレーズが電波通信の業界で賑やかだった。当時電波は、従事者試験を合格して免許を得たものしか扱えず、電波機器は一つひとつ検査を受けてパスしたものしか使えなかった。電波は一部の無線通信業者を除けば、アマチュア無線家しか使っていなかったと言って過言でない。今や携帯電話機はただ同然となって氾濫し、金髪高足駄のギャルが市場の動向を決め、通信会社の命運を左右する。振り返ってみると、あのキャッチフレーズは今日の携帯電話時代を予告するドラムの遠鳴りであったのであろう。今日の「ユビキタス」の呼び声の高まりは、いずれ来る「真の高度情報社会」への動きがいよいよ始まったことを報せていると予感される。
 さまざまな期待や思惑と、現実の進み方のタイムスケールはいろいろ異なると思われるが、技術は着実に進歩し、マーケットを求めて投資は確実に進むであろう。「ユビキタス通信時代」が速やかに、順調に到来し、今日の携帯電話のように社会生活に無くてはならないものになるためのカギは何か。若者達は携帯電話の仕組みや技術を全く意識せず、ただ便利だから小遣いを削ってまで電話代に使っている。今日まだまだ技術開発やシステムが目立ちすぎる状況や意識から脱却して、簡単に使え、生活感覚があり、便利でコスト・パフォーマンスの良い利用のモデルを提示することが、人々を惹き付け、「ユビキタス時代」を早め、確実なものにすることを改めて認識しなければならない。