特集ATR音声言語通信研究所設立

「夢の技術」の実現に向けて




基盤技術研究促進センター 理事長 篠島 義明



 この度、エイ・ティ・アール音声言語通信研究所が創立されましたことに、心よりお祝いを申し上げます。
 先般、小渕首相の諮問機関である「21世紀日本の構想」懇談会の最終報告が発表され、その中で、21世紀の世界の主な潮流の一つとして「グローバル・リテラシー(国際対話能力)」という言葉が挙げられております。これは、「世界にアクセスする能力」、「世界と対話する能力」ということであり、この能力の基本は、コンピュータやインターネットといった情報技術を使いこなせることと、国際共通語としての英語を使いこなせることである、としております。そして、報告では、「社会人になるまでに日本人全員が実用英語を習得する」という目標が設定されております。
 他方、日本人の英語力不足は以前から指摘されているところであり、最近の新聞報道によれば、英語能力試験TOEFLで日本は前年のアジアで最下位の成績からは脱出したものの、依然として低レベルにあります。かかる状況においては、エイ・ティ・アール音声言語通信研究所の研究成果には、日本人の英語能力を補うものとして、つまり、世界を知り、世界にアクセスするもっとも基本的な能力を補うものとして、大きな期待が寄せられているものと考えております。
 また、これまでATRをはじめとした当センター出資の会社は研究開発で大きな成果を挙げていただいておりますが、出資に対するリターンという面では極めて厳しい状況にあり、研究成果の実用化の推進など事業の収益性の向上が極めて大きな課題となっているところであります。当センターとしては、エイ・ティ・アール音声言語通信研究所には、研究開発のみならずその実用化への貢献についても、多大な成果が得られることを期待しているところであります。
 エイ・ティ・アール音声言語通信研究所が取り組まれる音声翻訳の技術は、言葉の壁を超えたコミュニケーションを実現する「夢の技術」といわれてきましたが、これまで培ってきたエイ・ティ・アール自動翻訳電話研究所およびエイ・ティ・アール音声翻訳通信研究所の成果を発展させることにより、音声翻訳の実現はもはや夢物語ではなくなってきているものと確信しております。
 エイ・ティ・アール音声言語通信研究所の試験研究がその目的を達成され、多大な研究成果が得られるとともに、出資各社のご尽力を賜り、一日も早く「夢の技術」が実用化されることをお祈りして、お祝いの言葉とさせていただきます。