



特集ATR音声言語通信研究所設立
ATR音声言語通信研究所の設立にあたって(祝辞)
郵政省 大臣官房技術総括審議官 田中 征治
このたび、エイ・ティ・アール音声言語通信研究所がめでたく設立を迎えられたことを、心よりお慶び申し上げます。
21世紀を目前にして、情報通信が社会に果たす役割はますます重要性を増してきており、我が国としても、国際的に展開されている情報通信分野での激しい技術開発競争の中で遅れをとらないためにも、基礎的研究開発を強力に推進することが極めて重要になってきております。
このような状況のもと、ATRが担うべき役割は非常に重要なものとなっておりますが、これまでの14年間、この期待に応えるべく、着実に基礎的研究開発を進めてこられました。そして国内はもとより国際学会を先導する質の高い研究実績を挙げられ、世界的知名度を有する研究所に発展されました。このことは、これまで研究に励んでこられた研究者の方々、ならびに研究開発を支援された多くの関係者の方々のご努力によるものと、深く敬意を表する次第であります。
現在、私たちをとりまく社会は、経済活動の国際化やインターネット等のコンピュータ・ネットワークの拡大に伴い、情報通信のグローバル化が今後急速に進むものと思われますが、こうした中、世界の人々の間にある言葉の壁を超えたコミュニケーション手段の実現が強く望まれております。音声は人間にとって最も基本的で慣れ親しんだコミュニケーション手段であり、言語の異なる人と人との会話において「話した言葉が直ちに翻訳され発声される」という音声翻訳技術の実現は、昔から変わらない私たちの夢であります。
このような音声翻訳技術について、ATRにおいては、エイ・ティ・アール自動翻訳電話研究所における研究に始まり、エイ・ティ・アール音声翻訳通信研究所に研究が引き継がれ、話題を限定した場合にはほぼ実時間で音声翻訳が可能という段階まで到達してきております。今回設立されたエイ・ティ・アール音声言語通信研究所では、様々な場面で行われる自然な話し言葉の同時通訳の実現を目標として、研究開発が進められることになっておりますが、本研究に携わる研究者の方々においては、活発な研究活動を進められ、優れた成果を挙げられますよう期待しております。
また、研究成果を広く世の中に普及させることも重要であり、多くの企業の皆様にご活用いただくことでATRの研究開発が進展し、ニーズに合わせた成果を生み出す原動力となりますので、そのためにも関係企業の方々のご協力をよろしくお願いしたいと思います。
今後とも、ATRには関西文化学術研究都市の中核的役割として、マルチメディアがますます重要性を増している今の時代をリードする研究活動を進められることを大いに期待しております。郵政省といたしましても、世界に誇れる情報通信分野の研究機関であるATRに対し、今後とも一層の支援をして参りたいと思います。
最後に、本研究所の素晴らしい研究成果を近い将来私たちが享受できるよう期待いたしますとともに、ATRのご発展と研究者の皆様方のご活躍を心からお祈り申し上げまして、お祝いの言葉といたします。