康志君は、出社するとすぐに自席のワークステーションを立ち上げた。それと同時に、AIDEも自動的に立ち上がる。AIDEが起動すると、さっそく康志君は自分が興味をもっている話題の対話に目を通し始めた。「またいろんな意見が出てるなあ」と思いつつ、一つ一つの発言に目を通していく。自分の研究に関係する話題の所で、ちょっと言っておきたいことがあったので、康志君は自分の意見を入力して、発言ボタンを押した。 |
「おっ、新しい話題が始まってるな。」康志君は、フレッドリストに今までなかったスレッドを見つけた。同僚の一之君が始めたスレッドらしい。履歴を見ると、始まってわずかの間に爆発的な量の発言があったようだ。「うわ、これは内容の把握が大変だ。よし、とりあえず話題構造がどうなっているかを見てみよう」と、AIDEのサブシステムであるDiscussion Viewerを起動した。「なるほどね、だいたい3つの内容が出ているわけか。」康志君は、Discussion Viewerの画面を見て、おおまかな話題の構造を簡単に把握した。 |
一応内容を把握した康志君だが、どうもいまいちピンとこない。「ちょっと僕の考えは違うんだよなあ…」と思いつつ、Discussion ViewerのメニューからPersonal Desktopを選んで起動し、Discussion Viewerの画面をコピーして、空間構造を自分なりに手直ししてみた。無意味と思う発言やキーワードを削除し、逆に自分なりの私的な意見を追加したりして、しばらく空間をこね回した末に、「そうそう、こんな感じだよ」と納得できる個人化空間ができあがった。そこで、このスレッドに参加している皆に自分の考えを伝えようと、できあがった個人化空間を公開した。「誰か他に個人化空間を公開してる人は…おっと、一之君の個人化空間があるな。」そこで、康志君は一之君の個人化空間を取りこみ、自分の個人化空間と融合してみた。「なるほど、一之君のこの発言はこういう意図だったのかぁ。」 |
ある程度話が進むと、みんなネタ切れになり同じ様な発言が繰り返され始めた。「なんだかこの話も退屈になってきたな」と康志君が思ったその時、AIDEの中に棲むConversotionalistと呼ばれるエージェントが話に割り込んできた発言した。エージェントの発言う何気なく読んでいた康志君は突然、「あ、なるほど、そんな関連があったのか」と、ポンと膝をうち、再び自分の発言を入力した。それをきっかけに再び活発な発言がなされ、沈滞していた対話は活性化された。 |