副社長に就任して




(株)国際電気通信基礎技術研究所 代表取締役副社長 酒井 保良



 去る6月21日の株主総会および取締役会にて、ATR-Iの代表取締役副社長に就任いたしました。あわせて、R&D4社の会長と成果管理会社4社の社長を兼任いたします。どうぞよろしくお願い申し上げます。ATRとの係りで思い出しますのは、前任の葉原顧問(前副社長)との発足準備段階でのNTT社内での議論です。たしか研究者の異動(出向、復帰)と工業所有権の帰属についてだったと記憶しております。
 最近では、10周年記念式典に参加させて頂き、熊谷先生のご講演やご来賓の方々のご祝辞を聞かせて頂くとともに、ATRジャーナル10周年記念特集号をじっくりと読ませて頂きました。
 ATRの4つの基本理念(基礎的独創的研究、産学官共同研究、国際社会貢献、関西学研都市の中核)、日裏相談役(前社長)が掲げられた3つの目標(自由・創造、ユニークな人材・研究、活気と楽しさ)、葉原顧問が模索されたキャッチフレーズ(人に学ぶ、トランスディシプリナリ、…)などなど現在のATR構築のベースとなったマネージメントポリシーは実に素晴らしいものであり、これからもこれらをしっかりと継承し、21世紀に向けて更に大きく発展させるべく努力していきたいと考えています。併せて、熊谷先生ご指摘の『企業では行うことのできない基礎研究を行う企業』という位置付け論についても、じっくりと取り組む所存ですので、皆々様のご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い致します。
 ATRのこの10年間の発展は、驚異というほかありません。この間の諸先輩並びに関連各方面の方々のご努力が、並み大抵のものではなかっただろうということは、容易に推測できます。もちろん、この発展の原動力は、研究現場の研究者の方々であったということは言を待ちません。今回、本職に就任するにあたり、諸先輩の方々から、『これからの10年が大事だよ』という意味の励ましのお言葉を頂きました。そのプレッシャーに、身の引き締まる思いと、大いなる“やりがい”を感じているところです。とは言いましても、ATR運営に関します新任副社長としての理念や方針を具体的に打ち出すには、いま少しのお時間を頂きたいと考えています。それは、これまでの経験から、『研究現場の現状を勉強し、それを実感として十分に理解することが先決』と考えているからでございます。この意味で、ATRに関心を持って頂いている諸先生方やご出資頂いている各社のR&D担当の方々ならびにATR社内の研究者の皆様にご意見を賜わりたいと考えていますので、率直なご意見をお聞かせ下さいますようよろしくお願い致します。
 大阪生まれの大阪育ちの私にとって、30年ぶりの関西は、実に懐かしくまた心楽しい思いでいっぱいです。関西にこだわりを持ちつつ世界を目指すATRの姿勢に、かつての堺や大阪の商人魂を感じています。彼らが持っていた“しなやかさ”と“したたかさ”は、これからのATRに最も役立つ精神構造のような気もします。
 歴史と文化を大切にしつつ、より多くの人々が、明るく楽しく活き活きと暮らせるための通信基盤の構築を目指して、研究現場の方々と一丸となって頑張りたいと考えています。なにとぞよろしくお願い致します。