創立1周年を迎えて
代表取締役社長 日裏 泰弘
昨年3月、ナショナルプロジェクトとして設立されたATRも、その支援する四研究開発会社とともに、はや一周年を迎えることとなりました。この間、総力をあげて優秀な研究員の確保をはじめ、必要な資金の調達など研究体制の充実と整備に努めて参りましたが、お陰様でようやく新しい研究所としての軌道に乗せることができました。これもひとえに関係各界の絶大なご支援とご協力の賜物であり、ここに厚くお礼を申し上げます。
さて第二年目の大きな課題は、ATRの自立、すなわち経営・研究両面にわたり、その基盤を確固たるものにすることであります。このため、まず長期展望の上に立った中長期計画を策定し、その積極的かつ着実な実行、推進を図ることとしております。また、近く京阪奈丘陵に本研究所を建設することになりますが、これもソフト、ハードともに創意工夫をこらし、基礎研究にふさわしい環境づくりをめざしております。さらに管理運営面につきましても、従来の制度や慣習にとらわれず、研究者主体の思い切った施策を導入し、常に、研究意欲が溢れる活気ある研究所にしたいと思います。このほか、基盤強化のための有効な施策を適時適切に行うこととしていますが、何よりもまして、ATRにとって大事なことは、研究者に真の研究する自由を保証することであります。米国の120というノーベル賞の重みを支えているのは、この国に深く根差した研究の自由であることを思えば、このことはいくら強調しても過ぎるということはありません。私等は、若き優れた頭脳から生まれる自由かつ大胆な発想を大切にし、これを大きく育て上げる研究環境を守ることが、創造性の発揮につながるものと確信しております。
これからもATRの進むべき道は、遠くまた険しいと思いますが、「21世紀にかける橋」という使命を深く認識し、産・学・官はもちろん、国際的な協力関係を緊密にしながら、創造的な基礎研究の推進に全力を傾注して参りたいと存じます。今後とも関係各位のご支援とご鞭撻をお願い申し上げる次第であります。