TR-O-0132 :1996.3.15

松井一浩

ミリ波ブリッジ型MMICスイッチ

Abstract:従来から一般的に用いられている直・並列型スイッチは、挿入損失およびアイソレーション(ON/OFFの挿入損失比)をデバイスのON抵抗とOFF容量に依存している。また、そのON抵抗とOFF容量は互いにトレードオフの関係にあるため、ON・OFF時の挿入損失を共に向上させることは困難である。そこで、ミリ波において低挿入損失と高アイソレーションを実現するために、4つのFETからなるブリッジ回路を用いた「ブリッジ型スイッチ回路」を新たに提案した。 本スイッチのOFF特性はデバイスのON抵抗、OFF容量の性能に依存せず、ブリッジ回路のバランス性に依存し、ON特性は直・並列型スイッチなどの従来型のスイッチと同様にデバイスの性能に依存することを特徴としている。ON・OFF時のブリッジ型スイッチ回路の入出力特性と各回路素子パラメータの関係をシミュレーションにより明らかにした。その結果、ON時の反射損失は改善の必要があったので、FETのゲート幅による最適化について検討した。 上述の検討結果を元に、ブリッジ型MMICスイッチの試作を行った結果、40GHzまでの周波数帯で、6dBの挿入損失と25dBのアイソレーションを得た。電力入出力特性は、単信号でサプレッションレベルが15dBm以上であることを確認し、約27dBmの入力インターセプト・ポイントが得えられた。また、FETのゲート幅の最適化によるON時の反射損失の改善は、ゲート幅を100 μmから最適値の67 μmにすることによって40GHzで約5dB増加し、40GHzまでの周波数帯で12-16dBの反射損失が得られた。このブリッジ型MMICスイッチのON時の反射損失の改善効果は、シミュレーションによる改善予測と良く一致することから、FETのゲート幅の最適化による反射損失の改善策の有効性を確認した。