TR-O-0128 :1996.3.15

下田平寛

レーザマイクロビジョンの信号処理

Abstract:当研究所で開発中のレーザマイクロビジョンは,1 μmオーダの3次元構造を持つ物体内部を非接触,非破壊で診断,検査することを目的としたレーダの一種である.通常のレーダでは,物体にパルスを照射してエコーの遅延時間,すなわちインパルス応答を測定することにより物体内部の反射点位置を検出する.しかしこのパルス法(時間領域法とも呼ばれる)でμmオーダの空間分解能(定義1.1)を得るには,時間幅およそ10-15秒のパルスを発生させる複雑な光学系が必要となるため実用化には適さない. そこで,レーザマイクロビジョンでは,上記インパルス応答とフーリエ変換の関係で結ばれる周波数応答を測定した後信号処理によってインパルス応答を構成する周波数領域法を採用した.周波数領域法の利点は,その実現の鍵となる波長可変光源に半導体レーザを利用できることから,パルス法と比較して小型,低価格で,かつ高分解能の装置を実現可能なことである(実際の装置については[1]を参照). 本論文では,測定した周波数応答からインパルス応答を構成するための信号処理法について述べる.第2節で周波数領域法の空間分解能が波長可変光源の波数(定義1.2)帯域により決定されることを説明する. 波数帯域により決定される分解能,すなわちFourier変換分解能を克服することを目的とした信号処理法として,当研究所で考案したニューラルネット法,Kernel MUSIC法をそれぞれ第3,4節で述べる.各手法の性能をシミュレーションと,実験データヘの適用により検証する.