TR-O-0047 :1992.3.31

竹中勉

MMIC回路構成法の研究

Abstract:ATR光電波通信研究所では、腕時計サイズの超小型移動体通信器の実現に向け て、小型・高集積化MMICの構成法の研究を行っている。1987年に線路一体化FET(LUFET)[1.1]-[1.4]、および誘電体薄膜による多層化MMIC[1.5],[1.6]の概念を提唱し、以来、新構成LUFETの提案、LUFET MMICの具体化、多層化マイクロストリップ線路のLUFET MMICへの適用を進めてきた。その結果、従来MMICに 比べ3~10倍の集積度を上げるに至っいる。ここでは、報告者の研究成果の総括を 目的とし、図1に示す研究フローの中で開発した①LUFET MMIC、②多層化MMICおよび③多層化LUFET MMICの構成、特徴、および設計理論について述べる。①のLUFET MMICは、共平面線路を使用する共平面MMICにおいてFET の電極配置までも共平面線路となるようレイアウトを行い、FETサイズで回路機能を実現、チップ面積の小型化を図るものである[1.3]。本報告では、代表的な LUFETのひとつである信号合成LUFETを用いたシングルエンドミクサMMIC、 スロットライン直列T分岐をLUFETに一体化した平衡型周波数逓倍MMICについ て述べる。シングルエンドミクサの項では、LUFET MMICミクサのシステム応用例、L帯アクティブアレーアンテナ用モジュールについても触れる。②の多層化MMICは、GaAs基板上に金属導体膜と誘電体薄膜を積層した構造を有する [1.6]。本報告では、これをマイクロストリップ線路(誘電体薄膜マイクロストリップ線路)として用い、ストリップ導体幅を従来に比べ約1/10にした分布定数型増幅器と積層構造のストリップ導体として用いた多層化スパイラルインダクタとについて述べる。③の多層化LUFET MMICは、積層化した誘電体薄膜マイクロストリップ線路(多層化マイクロストリップ線路)をLUFET MMIC内の分布定数線路に 採用し、さらに小型高機能化を進めたものである。本報告では、合成/分配などの複数回路機能をFET構造内で実現したLUFETと多層化マイクロストリップ線路を有機的に組み合せた小型化イメージリジェクションミクサMMIC、バランス型ミクサMMICについて述べる。 本報告で述べるLUFET MMIC/多層化LUFET MMICがミクサ、周波数逓倍器など の周波数変換回路に終始した点については、LUFETの特徴が信号の合成、分岐に 有効であり、従来構造のMMICと比べ、その優位性を示し易かったことによる。 ①~③の各MMIC共、従来に比べ、3~10倍の集積度向上(小型化)かつ2倍程度の周波数広帯域動作(イメージリジェクションミクサ、多層化スパイラルインダクタを除く)を達成している。