TR-O-0019 :1989.12.28.

原信二

マイクロ波回路小型化の研究

Abstract:究極の通信の目標として、「何時でも、どこでも、誰とでも」ということがいわれてい る。それをハードウエアの面から実現するための一つの要素として、移動機の小型化があ る。すなわち、常に持ち歩け、もっていることを意識しない程小さな無線機を実現する必要 がある。そのためには現状の無線機のマイクロ波回路部分を1/40程度に小型化する必要が ある。又、現在のマイクロ波通信における手法は本来3次元で到来する電磁波としての信 号をパラポラアンテナ等で受信し、1次元の時系列信号になおし、コンバータでベースバンド におとした後にディジタル信号処理するものであり、マイクロ波回路は単に周波数変換の みに用いられている。一方、近年マイクロ波の空間情報を用いた時空間信号処理、 adaptive array antennaを用いたアレイプロセッシング、neural networkのマイクロ波 への応用等の提案が行なわれている。この様なマイクロ波信号処理を行なうには、非 常に多くのマイクロ波回路が必要となり、しかもそれらは、これまでの増幅、周波数変換 のみの機能ではなく、他端子の分配回路、スイッチング回路、位相制御回路、レベル制御回 路等の、各種の信号処理機能、制御機能をもったものが要求されてくる。すなわち、そ れぞれのMMICモジュールは非常に小型であると同時に、多機能でなくてはならない。 前述の様に、1980年代中ごろからMMIC小型化・高機能化の動きが急速に進んでいるが、 それらは依然として、FETと、マイクロストリップラインを中心とした伝送線路による受 動素子の組み合せというMICと同様の基本的な回路設計手法からは抜け出していない。この 様な従来の回路技術の延長では将来要求される高集積MMICは実現できず、新たな回路設計法が必要となる。ここでは、マイクロ波の伝送線路をFETの電極構造に一体化した線路一体化FET(Line Unified FET=LUFET)、従来受動素子で構成されていた回路機能を能動デバイス で実現する能動化受動素子(Active Passive Element)、および共平面MMICの上に誘電体と金 属を積層し、伝送線路を多層化した多層化MMIC(Multilayered Passive Module)を用い回 路の小型化をはかる。