柴田健次
通信サービスにおける要求の理解
Abstract:通信サービスに対する設計者の要求を理解しサービス仕様を獲得するシステムについてまとめたものである.
要求理解はソフトウェア開発工程の上流に位置し,この段階で曖昧さあるいは間違いを残すと後の開発工程に
多大な影響を及ぼし生産性の低下を招く.従って,要求を正しく理解することが生産性の向上にとって重要である.
要求を正しく理解するには要求に含まれる曖昧さを扱えることが必要となる.
また,通信サービス仕様を形式的に記述することによりサービス仕様作成段階で検証を可能とし生産性向上
の一助となる.当研究室では通信サービス仕様を形式的に記述する手法として,状態遷移規則に基づいた
動作記述手法(STR)を開発し実際に使用している.
本稿では要求理解を「曖昧,断片的な要求から状態遷移規則に基づいた動作記述手法を用いたサービス仕様を生成
すること」と定義する.要求記述としてSTRと同形式の記述を採用することを前提としたとき,
要求理解が状態の到達可能性解析問題に帰着できる.ここで,
1.STRで与えられた動作から指定した状態の到達可能性が判定可能か否か.
2.曖昧さを含む要求の取り扱いが可能か否か.
ということが問題となる.本稿では1に対して決定可能であることを示し,
2に対して仮説推論を導入した到達可能性解析で対処することを示す.
さらに要求理解システムの部分システムとなる到達可能性解析システムについてその手法,
特徴,試作システムの概要について述べる.