TR-C-0021 :1988.1.22

西野治彦,秋山健二,小林幸雄

直線型3次元Hough変換による平面の抽出

Abstract:画像処理やコンピュータビジョンにおいて、2次元平面上に分布した点の集合から直線や円等の特徴を抽出するのにHough変換の手法がよく用いられている。直線を抽出する通常のHough変換や、円や楕円等の任意の特徴を抽出する一般化Hough変換(generalized Hough transform)においても、その特徴を精度よく抽出するには、膨大な計算時間と計算メモリが必要である。最近では、このような計算量をいかにして低減し、Hough変換を実用的なものにするかが研究対象となっている。 一方、Hough変換を3次元に拡張すると、3次元空間上に分布した点の集合から平面を抽出する手段となる。同様に、一般化Hough変換では、球や円錐等の任意形状の特徴を抽出する手段になる。2次元のHough変換に対して、このような次元数を拡張したHough変換は、多次元化Hough変換(extended Hough transform)と呼ばれている。3次元Hough変換は、2次元の場合に比較して、さらに多量の計算量が必要であり、現在のところ、実用的な方法であるとは言い難い。最近では、各種の3次元計測の技術が開発され、3次元空間上の物体表面の座標データを計測して距離画像等が得られるようになっており、こうしたデータから、少ない計算量で3次元空間上の平面や任意形状の特徴を抽出することは、興味深い研究テーマになってきている。 筆者らは、光切断法を用いた3次元立体形状入力について検討を行っている。光切断法では、スリット状の光を物体に投影し、スリット光の平面で物体を切断したとして、その切断面の輪郭線形状を三角測量の原理で計測する。筆者らの立体形状入力システムでは、入力対象物体を回転テーブルの上に置き、スリット光を回転テーブルの回転軸方向に投影する。したがって、物体表面上の計測データは、常に回転軸を含む平面上に存在するという性質がある。 光切断法で計測した輪郭線形状を折れ線で近似すれば、物体表面上の直線データを検出することが可能である。そこで、収集した物体表面上の直線データをもとに3次元Hough変換の手法を使って物体表面の平面を抽出することを検討した。 本レポートでは、次の検討結果について述べる。

(1)直線を3次元Hough変換すると、3次元Hough空間上に曲線が生成されることに着目し、直線集合の各直線を3次元Hough変換し、3次元Hough空間上での曲線間の交点から平面を抽出するアルゴリズムを提案する。

(2)筆者らの立体形状入力システムで得られる直線データの規則性(直線データは、回転ステージの回転軸を含む平面上に存在する)を利用して、2次元のHough空間上での曲線間の交点から平面を抽出するアルゴリズムを提案する。

(3)正12面体の立体形状について、計算で求めた理想的な直線データの集合、及び、実際に計測した直線データの集合から、本アルゴリズムによって平面抽出を試みた結果を述べる。