TR-A-0035 :1988.9.29

本郷節之,乾敏郎

アイコンの認知容易性に関する諸要因の検討

Abstract:ユーザフレンドリなマン・マシン・インタフェースを実現する上で、有力な手段 の一つにアイコンがある。アイコンは、言語によらず、ユーザの視覚に直接的に 訴えるコミュニケーションを可能にするものであり、国際的に共通なマン・マシ ン・インタフェースとしてその重要性が高まりつつある。アイコンの研究は、従 来、特定のシステムの構築を目的としたものが多く、一般化できる成果が得られ ているものは少ない。対象に依存することなく、人間の情報処理過程と親 和性の高いアイコン設計指針を得るためには、図記号・絵文字等、意味を持った 図や絵一般の認知特性を知ることが重要と思われる。 そこで、その手がかりを得る目的で、日常経験的に学習している図記号を対象 に命名反応実験と評定実験を行い、命名の正答率・イメージ一致度・経験 頻度を調べた。本報告では、実験の概要および実験結果について述べ、正答率・ イメージ一致度・経験頻度の関係を考察すると共に、抽象的・具象的図記号の認 知特性の違いを検討して、アイコンの設計指針を考察する。 まず第2章では、実験の目的について述べる。続いて第3章では、命名反応実 験および評定実験の実験条件と手続きについて説明する。第4章では、2つの実 験から得られたデータを示し、正答率・経験頻度・イメージ一致度なる3つの変 数間の単純相関および偏相関について検討する。さらに、実験に用いた図記号を、 図柄・表現内容の各々について、抽象的なものと具象的なものとに分類し、正答 率の比較および変数間の相関について検討する。第5章では、実験及び検討結果 に基づいて、アイコンの設計指針として重要と思われる図記号の認知特性,および今後の課題について考察する。