ATRの更なる飛躍を期待する




郵政省 通信政策局長 山口 憲美




 このたび、ATRがめでたく創立10周年を迎えられたことを心からお祝い申し上げます。
 顧みますれば、昭和60年に施行された基盤技術研究円滑化法に基づき、民間の基盤技術研究への取組を支援する基盤技術研究促進センターが設立されました。同センターの出資制度の適用を受けた最初のR&D会社がATR傘下の4研究所であります。
 これらの研究所は、電気通信分野における基礎的・独創的研究の推進、産学官共同研究の場の提供、国際社会への貢献、関西文化学術研究都市における中核的役割の4点を基本理念に掲げ、着実な研究を進めてこられました。その結果、IEEEを始め世界的権威のある学会等から毎年10件前後受賞するなど、国内はもとより、国際学会を先導する質の高い研究実績をあげられております。この間にこれらの研究所で研究に励んでこられた研究者の方々、並びに研究を支援していただいた多くの関係者の方々に深く敬意を表する次第であります。
 現在、ATRでは、環境適応通信という研究所を設立され、新たな領域の試験研究に挑もうとされています。この上は、継続中の研究共々、さらに活発な研究活動が進められ、優れた成果をあげられますよう期待いたします。
 21世紀を目前に控え、情報通信政策は内外ともに重要な時期を迎えております。情報通信技術の開発は、その重要性にもかかわらず、現在の我が国の取組は十分とは言えません。国際社会における情報通信の将来に亘る発展を支えるためにも、国全体として本分野の研究に取り組み、研究開発体制の整備を推進し、基礎的研究開発の充実を図る必要があります。その面で、ATRが担うべき役割は非常に重要であります。今後も、関西文化学術研究都市の中核的役割として、マルチメディアがますます重要性を増す時代をリードする研究活動を進められることを期待します。
 終わりに臨み、ATRの限りなき御発展と研究者の皆様方のご多幸をお祈り申し上げましてお祝いの言葉といたします。