コラム


設計上流工程を攻めろ
テーマの絞り込みには大変苦労しました。あれこれと思い悩んだ末、ソフトウェア開発に当たっては、仕様に誤りが発見された場合の手戻りが非常に高価なものになる。即ち、上流工程における正確な仕様獲得がキーであることを考慮して、ATR在籍中は設計上流工程を支援する技術の検討に的を絞ることにしました。非専門家でも簡単にソフトウェア作成ができるのでは…。そんな夢を追いかけあっという間に過ぎてしまった4年間でした。

元 通信ソフトウェア研究室 主任研究員 平川 豊
(現 日本電信電話(株)ソフトウェア研究所 ソフトウェア技術研究部 主幹研究員)




研究室の立ち上げ
ATR発足と同時に出向したが、オフィスには最初の仕事である物品調達で手に入れた机、椅子、電話、書棚しかなく、ATRの研究は、実に紙と鉛筆からスタートした。特許出願を出すことになっても何の決まりもなく、明細書作成、特許事務所の選定・契約、事務処理要項の作成、そして出願と言う一連の作業を進めることによりATR第1号(から第4号)の栄誉を得た。また研究テーマの発掘を目的に毎日、毎日ハイレベルの議論をし、その中から臨場感通信システムの研究テーマの骨格が出来たように記憶している。今後もATR発足の時のような、自由な発想、夢を追って仕事に取組みたい。

元 知能処理研究室 主任研究員 秋山 健二
(現 日本電信電話(株)マルチメディア推進本部 マルチメディアサービス部アプリケーション開発プロジェクト 担当部長)




ヒューマンインタフェースへのVRの導入
私が入社した設立後1年のATRには様々な刺激を受けた。今でも思い出すのは、社長から研究員まで参加して定時後会社でビールを飲みながらの議論を(ほぼ毎日)したこと(当時は研究所は大阪の京橋にあった)。もちろん自由な雰囲気で自身の三次元ユーザインタフェースの研究に打ち込めたことも忘れられない。このような環境の中で小林室長の「面白そうだから買おう!」の二つ返事の許可で東大の廣瀬先生に紹介されて日本で3番目に購入したData Gloveが、いろいろのアイディアのネタとなり仮想物体操作の研究に役立ったのは間違いない。VR技術の進展はめざましく、今後の10年でどうなるかまた楽しみである。

元 知能処理研究室 主任研究員 竹村 治雄
(現 奈良先端科学技術大学院大学 情報処理学専攻 助教授)




「問題点は?」
「で、問題点は何?」とATR出向中によくつっこまれました。担当テーマはシステムのセキュリティ評価。初めての分野で、どこから手を着けて良いかわからず、いろいろ文献を調べ、あれこれ思い悩んで研究方向を決めたつもりでも、大抵この言葉でつき返されるのでした。
しかし、やはり対象分野の問題点をしっかり把握しないことには良い研究は始まらないんですよね。問題点を自ら発見することの重要性、難しさを認識させられたATRでの3年間でした。

元 通信ソフトウェア研究室 研究員 荒木 禎史
(現 (株)リコー 研究開発本部 情報通信研究所 マルチメディア研究センタ 651研究室 主任)