コラム


施設誘致で思い出深いのが、郵政省管轄の国際電気通信基礎技術研究所(ATR)。予算獲得が難航するなか、橋本龍太郎さんに相談すると、「竹下登蔵相に会いに行きなさい。話はしておきましょう。」と言ってくれた。早速、竹下事務所を訪ねると、「大臣折衝にするかなあ。」と呟かれた。
これで決まりだと、その足で左藤恵郵政相に「大丈夫だから、最後までがんばり通して下さい。」と念押した。

元 取締役相談役 宇野 收
(現 東洋紡績相談役・関経連相談役)




『7人の侍』−銀座版

思い出した。ATR設立準備は花の銀座電話局6階で始まった。
約10年前11月15日初回技術委員会後、出身母体、専門分野、経歴の異なる、長期外国出張帰り、技術試験途中駆けつけた者、関西から赴任が間に合わず後日参加した者達が、正式辞令は2週間後という状況で集まり、技術事務所発足。検討課題膨大、外部条件不明確、基礎・基盤研究、関係者思惑多様に悪戦苦闘、その割には平然を装って業務遂行。各人の深夜に及ぶ活動目覚ましく、研究計画、基本的組織、研究体制、研究棟建設計画を3ヶ月で必死にまとめた。翌年3月全員揃って、ATRに参加。Last but not least、技術事務所の『7人の侍』−粟倉敏博、木本隆三、小林幸雄、東倉洋一、安川交二、吉川憲昭−の諸氏に感謝します。皆さんに幸多かれ!

元 取締役企画部長 吉田 裕
(現 法政大学 工学部 電子情報学科 教授)




TWIN21時代の思い出

ATRは、TWIN21ビルの第1号・最大のテナントとしてスタート。
ATRは、'86年4月1日、当時、西日本一のノッポビルTWIN21・MIDタワー・11〜13階の3フロア(最終的には6.5フロア)を専有して、その産声をあげた。同ビルの竣工は4月11日であり、正に最終仕上げ工事中のことで、正真正銘の第1号のテナントと言える。
ATR-IとR&D各社の仕事は違えど、目標は同じ開所を間近に控えたある日のこと、我々ATR-Iの在大阪常駐メンバー4人は、什器類の搬入等の作業で多忙を極めていた。其処へR&Dに着任される研究員が三々五々と見えられたが、なんと我々と一緒に喜々として机等の搬入作業の手助けをしてくれたのである。その時の皆の顔が今もって脳裏に鮮明に焼きついている。今も、開所当初の希望に満ちた明るい顔が、そのベースにあることを信じつつ、ATRのさらなる飛躍とご発展を祈念いたしております。

元 総務部 総務課長 顯谷 友幸
(現 (株)エフエム京都取締役)




「今日、これからある研究所建設のために敷地調査にいってくれ、資料は新幹線の中で読むように」。ある日、このように指示を受けたのがATRと私の出会いの始まりでした。学研都市の敷地も当時は乾川沿いに山のなかへ伸びる山道が一本あるだけで、建設予定地の造成工事も今だ着手されておらず、灌木の生い茂る山のなかに分け入りました。所々天水を溜めておく小さな池があり、20cmはあろうかというカラス貝が幾つか水底に見え、生命の息づく様を感じるとともに、この自然をうまく利用した計画がたてられないものかとの発想が生まれ、結果として、今の敷地の一郭に自然林が残ることとなりました。建物の設計にあたっては、吹き抜けホールから自然林の背景に生駒の山が見えるよう「借景」の技法を取り入れましたが、研究者の方々が心の安らぎを感じる空間として役立っていることを願っています。

元 企画部 主幹研究員 下瀬 敏明
(現 (株)エヌ・ティ・ティ ファシリティーズ 都市・建築デザイン部担当部長)




研究所の移転を担当し、当初、事務所移転の大型版程度に気楽に考えていたが、検討を重ねていくに従い、いかに大変なものかが判ってきた。すべて環境がそろった中での移転ではなく、各種プロジェクトが平行進捗する中で、すべてを睨みながらの移転遂行。また研究所の特殊性から膨大な研究用機器、それらの重・軽量物、大・小物、粗・精密物等の混在。これらの分解〜組立調整作業はほとんどメーカに依存のためメーカ相互間の作業調整。さらには暫定研究所が他企業との共用建物の関係から、平日のエレベータの使用台数、地下駐車スペースの制限の中で平日は細々と、土休日に主力をおいた長期間に及ぶ息の長い移転。綱渡りの日々が続きながら、所員全員の度重なる休日、深夜作業など長期間に及ぶ積極的な協力に支えられたお蔭で期間約1か月半、トラック台数延350台の膨大な移転は事故もなく計画どおり遂行できました。この輸送期間中に「大喪の礼」が行われ、その当日輸送を取りやめにしたことも思い出深いエピソードです。今振り返ってみるに、各種プロジェクトの管理法にPERT管理という手法があると葉原副社長から教えられ、本を購入し猛勉強(?)したことなど限りなく懐かしく、貴重な経験をさせていただいたことに深く感謝しています。

元 総務部 担当課長 梅山 泰男
(現 日本電信電話(株)湊川営業所 所長)