新たなる研究開発への挑戦
−新体制下のATR 研究所の紹介−

企 画 部



 ATR設立以来15年間のあいだ、ATR各研究会社の研究を支えてきた基盤技術研究促進センター(KTC)による研究支援制度が終息しました。これを受けて、ATRでの研究会社による研究活動も終了しましたが、これまでに築かれたATRの基礎基盤研究の環境を維持するとともに、優秀な研究者を引き続き確保して世界に誇れる研究成果を輩出できるように、(株)国際電気通信基礎技術研究所内に、新たに4研究所を設置いたしました。本誌において、これらの研究所の研究概要について紹介をさせていただきます。音声言語コミュニケーション研究所、適応コミュニケーション研究所は、それぞれ従来の(株)ATR音声言語通信研究所、(株)ATR環境適応通信研究所の研究陣容の大部分を引き継いでいますが、これまでおよそ1年半、5年半のKTC制度下での研究活動の結果を踏まえて、目標や研究テーマの構成を見直して新規に研究活動を開始しております。主要な研究目標はそれぞれ音声対話翻訳技術に関する研究、自律分散型無線ネットワークに関する研究です。人間情報科学研究所は、旧先端情報科学研究部を組織改定に合わせて改称してできた研究所です。昨年度終了した(株)ATR人間情報通信研究所の一部の研究者を核に研究チームを構成しており、人間性豊かなコミュニケーションの実現を目標としております。メディア情報科学研究所は、新しいインタラクションメディアの研究開発を目標として新規に設置した研究所です。研究活動を終えた(株)ATR知能映像通信研究所の一部の研究メンバーを取り込んで研究を立ち上げています。これらの4研究所は設置以来、それぞれの研究方針にしたがって研究活動を続ける傍ら、KTC制度に替わる民間の基礎基盤研究の支援制度として通信・放送機構(TAO)の中に設置された「民間基盤技術研究促進制度」の平成13年度の公募に応募すべく、研究テーマの構想から具体的な研究体制に至るまでの検討を精力的に行い、提案書をまとめ応募いたしました。今回の提案結果として、上記4研究所から提案した研究テーマのすべてを遂行するのに十分な研究資金を獲得できなかったものの、主要な研究テーマをカバーできるだけの研究費を確保できたと考えています。TAOからの委託研究費でカバーしきれない研究テーマに関しては、他の研究ファンドなども確保して、それぞれの研究所が目標とする研究、技術成果を出せるようにしていきたいと考えています。なお、今回のTAO公募に関しましては、外部研究機関のご協力を得て、将来の電気通信の新方式技術に必須となるであろう新しい光デバイス開発に関する研究をATRの第5の研究提案として応募いたしましたが、残念ながら採択にはいたりませんでした。提案書の内容を再検討して次年度の募集に応募できるようにしたいと考えております。新しい基礎・基盤技術に関する研究テーマを発掘し、新規研究計画提案としてまとめ、TAOを含む各種研究公募に積極的に応募して必要な研究資金を獲得し、良い研究成果を出していくことが私どもATRのミッションであると考えておりますので、今後とも精力的に活動を続けていく所存です。これまでの研究企画・研究支援に関する仕事を主業務としていた弊社も、各種研究公募に応募して獲得した研究費で研究活動を行うことを主業務とする会社に大きく変わりました。今後も研究所運営等でさまざまな新たな課題が出てくるものと思います。今後とも皆様のご協力、ご支援をお願い申しあげます。