TR-O-0139 :1996.3.27

高橋光男

GaAs(311)A面・面発光レーザ

Abstract:GaAs(111)B面上に作製したGaAs/AlGaAs量子井戸(QW)構造の発光遷移確率の増大およびGaAs/AlGaAs量子井戸レーザのしきい値電流密度の低減が、早川等によって報告されて以来、高指数(n11)面上のQW構造の研究は、その特異な物性研究のみならず、デバイスの性能向上のための手段として活発に研究が進められている[1]-[2]。 一方、近年InGaAs/GaAsやGaInAsP/InP系の材料を用いた歪量子井戸構造を用いることにより、半導体レーザの性能が著しく向上する事が報告され、歪量子井戸構造デのバイス応用が注目されている[3]。 既に、筆者等は、この高指数面の持つ特徴と歪量子井戸構造の特性に着目し、(311)A面上のInGaAs/GaAs歪量子井戸構造を作製することにより、同様の発光遷移確率の増大およびInGaAs/GaAs歪量子井戸半導体レーザの低しきい値動作を確認した[4]。 さらに、これを発展させ、将来の光インターコネクトや光並列情報処理システムのキーデバイスとして期待されている面発光レーザヘの応用と性能向上について検討を行ってきた。 従来の面発光レーザは,通常結晶成長および加工が容易である等の理由から,(100)面方位の半導体基板が用いられてきた。 この(100)面上に作製された面発光レーザでは,活性層の利得分布が等方的であり、かつ共振器も面内では等方的な構造であるため、偏波方向の選択性が小さく環境温度の変化や動作状態によって偏光スイッチやモードホッピングといった不安定な現象が生じ,応用上大きな課題となっている[5]。 一方、(n11)面方位歪量子井戸(QW)構造は高利得および光学的異方性を有することが、日立の大歳等のグループにより明らかにされており、これを面発光レーザに応用することにより偏波制御の問題を解決することが可能である[6]-[8]。 さらに、集積化の際、問題となる駆動電流の低減や発熱の問題についても、(n11)面方位歪量子井戸(QW)面発光レーザの低しきい値特性を用いて、同時に解決できることが期待できる。 今回、我々は、(311)A面GaAs基板上にInGaAs/GaAs歪量子井戸・面発光レーザを製作し,室温連続発振に成功した。 さらに,(311)面上面発光レーザの特徴である低しきい値動作および安定な偏波制御特性が得られた。 本報告では、この(311)面上面発光レーザの結晶成長・素子作製と発振特性について述べる。