TR-O-0113 :1996.3.8

井田裕

方向性結合器を用いたマイクロ波 トランスバーサルフィルタの研究

Abstract:近年国内外においてセルラー、PHSやページングサービスの加入者が急増する一方、衛星を利用したグローバルパーソナル衛星通信システムなどの新しいシステムが計画されるなど、移動体通信の利用が拡大し、電波の利用が急増している。このようなシステムを普及させるキーは技術革新にともなう性能の進歩とともに、大量生産によるコストダウンである。移動体通信に必要なデバイスのひとつであるフィルタの中心は共振器タイプであるが、この共振器フィルタは優れたフィルタ特性をもつ反面、調整が不可欠でコストダウンを難しくしている。 一方、1940年にKallmannによって提案されたトランスバーサルフィルタ[1]は信号処理用のデバイスとしての他に、マイクロ波フィルタとしての研究も行なわれている[2][3]。ATRでは方向性結合器を用いたパッシブタイプのトランスバーサルフィルタの提案と積層セラミックを用いた試作を行ない[4]、準ミリ波帯での低損失性を示した。このトランスバーサルフィルタは外部インピーダンスのマッチングが容易なので調整が不要であり、MIC、MMIC化に適しているのでコストダウンが期待できる。 この報告書では、方向性結合器を用いるトランスバーサルフィルタの可能性を探る為に行なった研究の成果を述べる。2章では本トランスバーサルフィルタの設計法、特徴を明らかにする。3章では外部インピーダンスとのマッチングの容易性からミリ波帯MMICでの可能性を持つ、MMICトランスバーサルフィルタについて述べる。さらに4章ではコプレーナ型方向性結合器を用いたトランスバーサルフィルタという、多層構造を用いない簡単な製法でのトランスバーサルフィルタについて述べる。