TR-O-0109 :1996.3.6

木村和宏

非静止衛星通信ネットワークにおける 光衛星間通信パラメータの評価

Abstract:低高度地球周回軌道(LEO)または中高度地球周回軌道(MEO)に多数の衛星を配置し、グローバルな衛星通信サービスを提供するシステムが、最近数多く提案されている。そのうちのいくつかのシステムについては、近い将来衛星の打ち上げが行なわれ、実運用される予定になっている[1-5]。 初期のシステムでは衛星間通信を利用しないものが多い。Kaバンドの電波を用いて衛星間通信を行なって、ネットワークを構成するものもあるが、伝送容量はあまり大きくない。次世代のシステムであるテレデシック[5]では、60GHz帯のミリ波を使って1Gbps以上の衛星間データ伝送を行なう。しかしながら、これ以上の大容量の通信を周囲の複数の衛星と行なう場合には、搬送波として光を用いる光衛星間通信を利用するのが適当であると考えられる。光衛星間通信を用いると、電波を使用した場合と比較して、小型のアンテナおよび端末でさらに大容量のデータ伝送が可能になる。また、周波数の割り当てを受ける必要もなく、他の通信リンクとの干渉もほとんどないという利点がある。しかしながら、光衛星間通信では使用する光ビームの幅が非常に狭くなるために、1 μ rad以下という非常に高い精度で相手衛星から届く光を追尾し、正確に相手に向けて送信光ビームを指向する必要がある。また、現在の技術では送信器の光出力が十分ではなく、大出力のレーザーや光増幅器を開発する必要がある。また、衛星間距離の変化による受信レベルの変動に対応できるダイナミックレンジをもつ光受信器も開発しなければならない。 これらの開発を行なう際には、それぞれの機器にどの程度の性能が要求されるのかを事前に評価しておく必要がある。そこで、LEOおよびMEOの軌道高度について、同一軌道面内、同期して衛星が運動している軌道間、互いに逆方向にすれ違う軌道間の3種類の光衛星間通信に関するパラメータの評価を行なった。