川村博史
光/ミリ波無線リンクシステムの設計と構築
Abstract:近年、コンピュータの高速化や動画像を含んだマルチメディアの普及などにより高速データ通信の重要性が高まっている。LANの世界ではEthernetが10Mbpsから100Mbpsに高速化され、ディジタル通信のバックボーンではSDH (Synchronous Digital Hierarchy)で156Mbps、光ファイバ通信では10Gbpsあるいは20Gbpsと高速化されている。また、動画伝送を考えた場合、MPEG2では4Mbps~60Mbps、ディジタルHDTVで60Mbps程度の速度が必要である。
一方で携帯電話の爆発的な普及にも見られるように通信の無線化も極めて重要である。移動体通信を用いることにより情報収集効率が非常に高まるため、現在問題となりつつあるホワイトカラーの生産性の向上が期待される。オフィスなどのネットワークのように半固定で使用する場合にも無線化することにより、組織変更などに柔軟に対応でき極めて魅力的である。
従って、近い将来には完全な動画の携帯テレビ電話や超高速ワイヤレスLANなどの高速の無線通信システムが必要になり、その伝送速度は100MbpsあるいはATMに対応できる156Mbps程度になると考えられる。
そのような通信を実現するために、ATRでは光/ミリ波無線リンクを提案してきた。ミリ波/無線リンクは光ファイバで直接ミリ波伝送を行い、町中に多数設置された無線基地局で光/ミリ波変換を行いミリ波を空間に放射して無線通信を行う。光ファイバの低損失性を用いて長距離のミリ波伝送を行い無線区間では伝送されてきたミリ波をそのまま使用することにより、多数必要となる無線基地局の単純化ができる。その研究をさらに推し進め、システムの実現性を実証するために、モデルシステムを構築した。
本モデルシステムは電話局に対応する制御局に2つの無線基地局、2つの携帯局の構成とした。また、伝送信号としては、FM変調のアナログ画像信号(上り:43.95GHz/下り:48.55GHz)と、QPSK変調の120Mbpsのディジタル画像信号(下り:43.65GHz)の2種類の信号形式を用いた。
本テクニカルレポートはモデルシステム構築のためのシステム設計とシステム性能向上のための検討をまとめたものである。
本レポートでは新規研究内容だけでなく基礎的なことから網羅できるように心掛けた。各種文献や教科書等も数多く参照しているので参考にしていただきたい。また、途中の計算や理論等は間違い等も含まれると思われるので、重要な計算を行う場合にはもう一度教科書等で確認していただきたい。