TR-O-0101 :1996.2.19

新上和正

多自由度複雑系ダイナミクスの研究 - その理解と利用 -

Abstract:新しい情報処理ダイナミクスを目指し、多自由度複雑系の研究を行なう。 複雑系で発生する問題を解決するための新しい概念と方法が必要であり、得られた概念と方法は (通信ネットワークや並列分散多要素制御系などの)広範囲な系で成り立つと期待される。 ここでは、多自由度を持つHamiltonian系の運動を主に多重安定領域構造(many basin structure)の形成 と関連で調べる。 この系では、唯1つしか安定領域を持たない系と違って、KAMトーラスが崩壊するstochastic transitionは 安定領域の系を構成する要素の空間的配置に依存して現れることを示しす。 殆どの安定領域内の空間的配置に対してstochastic transitionが起こらない(則ち、 転移エネルギεc(N)はN→∞でゼロとなる)ことから、 相空間の殆どの領域はchaotic seaによって埋め尽くされていることを示唆する。 安定領域間の運動をBernoulli-likeなshift mapを使って記述し、三つの運動の形態に分類されることを示す。 更に、それらは、非対称的運動(asymmetric motion)が現れるかどうかに従って、二つのクラスに大別される。 非対称的運動の力学的起原を’相空間における運動の強度’という概念を導入して説明する。非対称的運動は緩和が 終了する前にカノニカルな確率分布が位置空間側に'transient'に形成するために生じることを示す。 相空間における運動の強度を最適化問題の枠組みの中で捉え直し、多自由度系の運動とNP完全な問題に対し最適化機構を議論する。