TR-O-0095 :1996.1.17

皆川晃

ミリ波帯MMICバランス型アップコンバータ

Abstract:近年、携帯電話が広く普及し、さらにはPHSが実用化されるなど、小型移動体通信システムの需要は急速に拡大している。しかしながら現在の移動通信に割り当てられている無線周波数はすでに逼迫した状態にあり、しかも帯域幅が狭く、大容量伝送は不可能である。そこで、まだほとんど未開拓であり、広帯域幅が確保できる「ミリ波帯」が注目され、無線LAN・パーソナル移動通信などへの応用が期待されている。しかし、これらを実現するためには、装置の小型・低価格化が重要である。そのためには各ミリ波回路のMMIC化技術の確立は必須であり、これまでに、増幅器や受信ミキサなどのミリ波帯MMICが報告されている[1][2]。また、受信ミキサと同じく無線装置には欠くことのできないコンポーネントの1つとして、アップコンバータ(送信ミキサ)がある。これは、一般に局発信号の漏洩を抑圧する必要があるため、MMICでは、フィルタを必要としないバランス型構成とすることが多い。 一方、このようなバランス型構成に用いられるハイブリッド回路などをMMICに適用する場合に、その占有面積、および伝送損失を減らす手段として、多層化MMIC構造の特徴を活用した積層化方向性結合器が提案され[3]、ミリ波帯増幅器等に適用されている[1][4]。 そこで本報告は、一般的なアップコンバータの構成法について述べた後、上記の積層化方向性結合器の構成、およびこれを用いたミリ波帯MMICバランス型アップコンバータの試作結果について述べる。