TR-O-0094 :1996.1.17

大谷直毅,三村秀典,冨永浩司,細田誠

半導体超格子中のΓ-X transferのキャリア輸送に対する影響

Abstract:本報告においては、GaAs/AlAs短周期超格子の光学特性および電気伝導特性に及ぼすAlAs中のX量子準位の影響についての新しい知見が解説されている。これらの知見は世界的に見ても非常に新しい発見であり、半導体超格子内の電子輸送機構に対し基礎物理的貢献をなした。本報告は以下の内容より成る。 電界印加による直接遷移型GaAs/AlAs短周期超格子の間接遷移型への転移を、縮退したホトルミネッセンススペクトルにより確認し、間接遷移型になると電子輸送に障壁中のX点に起因する遅れが生じることが発見された。(第2章) 直接遷移型GaAs/AlAs短周期超格子の電子輸送の電界依存性を超短光パルス励起による実験で評価し、これまで知られていなかった異常な遅れ電流が生じることを発見した。この遅れ電流が生じる電界では、AlAs障壁中のX1レベルとその隣のΓ2がmixingしており、X1-Γ2 mixingによって遅れ電流成分となる電子のpathが形成されることを示している。この結果は、直接遷移型超格子の電子輸送特性においてもX点の影響が如実に現れることを示す初めての発見である。(第3、4章)以上が本報告に述べられている新しい知見の概要であり、前記された4名の共同研究の成果である。なお、本報告の作成は、第1、2章を大谷が、第3章を三村が、第4章を細田が担当した。