TR-O-0026 :1990.3.30.

岡野善道,瀬戸弘之,辻誠滋,中西健司,西根士郎,藤本勲

GaAs(111) MBE成長とSiドーピング

Abstract:分子線エピタキシャル(MBE)法は超高真空下での結晶成長法であり、化合物半導体の結晶成長法として最近広く用いられている。MBE法では、結晶の組成は原料セルの温度で制御し、結晶構造は原料セルの前に取り付けられたシャッターの開閉により制御する。この方法組成及び膜厚が厳密にコントロールされた量子井戸構造や超格子構造が作製されている。 MBE法によるGaAs等の化合物半導体の結晶成長においては、従来(100)面基板が用いられている。この理由として、(100)基板を用いると成長表面が鏡面になること、(110)面がへき開面であるので(100)面を用いると半導体レーザを作製する際都合が良いこと等が挙げられる。しかし、(100)面以外の面方位に関しては余り研究されておらず、他の面方位基板上へのMBE成長に興味が持たれる。 本研究では、MBE法によるGaAs結晶成長の成長機構に関する知見を得ることを念頭において、(111)A面及び(111)B面上へのSiドープGaAsのMBE成長を調べた。第2章では、Si高濃度ドープ時に問題となっているドーパントの不活性化について成長面包囲の影響を調べた。Siの入るサイトは成長面包囲に大きく影響されるが、それに伴い高濃度ドープ特性も成長面包囲により大きく変わることがわかった。第3章では、(100)面方向に催かに傾けた(111)A面基板上への成長を調べた。Siの入るサイトが原料供給比や基板温度だけでなく僅かの基板傾斜で大きく変わることが見出された。得られた結果に基づいて、ドーピング機構について考察した。