TR-O-0021 :1990.2.20

尺田幸男,土屋博,片浜久

GaAs/AlGaAsおよびInGaAs/AlGaAs量子井戸構造におけるサブバンド間遷移

Abstract:現在,光を使った通信としては光ファイバーを使った有線システムが主流になっていて,さらに光の超高速性・並列性といった特性を生かした並列空間情報処理が次世代の情報処理通信技術として注目を集めている。通信デバイス研究室ではその要素技術として半導体光素子の研究を進めて来た。 量子井戸構造の伝導帯においては電子のサブバンド準位が生じる。そのサブバンド間遷移の緩和時間は数~十ピコ秒(10の_12乗)であるので,これを利用した高速の光素子が可能であると考えられる。また,サブバンド間遷移の光学非線形性を利用した新しい並列光素子も可能であると考えられる。さらにサブバンド間遷移を用いた素子は,その量子井戸構造を設計すれば動作波長が数~十 μmの領域において自由に決定できるという他の赤外域光素子にない利点がある。 このような量子井戸構造をMBE成長法で作製し,赤外吸収測定法でサブバンド間吸収を測定した。まず,GaAs/AlGaAs量子井戸構造について井戸構造・ドーピング・測定温度の依存性を調べた。つぎに,可視光と赤外光の光-光変調器を狙ってArイオン・レーザー照射時のサブバンド間吸収変化を調べた。さらに動作波長の短波長化を目的としてInGaAs/AlGaAs歪量子井戸構造におけるサブバンド間吸収の構造依存性を調べ歪の影響についても考察を行なった。サブバンド間遷移の非線形性の増大化の一つの方法として非対称形量子井戸にすることがあるが,その遷移エネルギーと遷移行列要素の計算を行なった。