TR-O-0007 :1988.12.20.

鎌田憲彦,土屋博,尺田幸男,片浜久

Si選択ドープGaAs/AlGaAs量子井戸構造の発光応答

Abstract:光ファイバーを利用した高速光通信システムの応用がさまざまな規模で図られている。さらに超高速性・並列性といった光の性質を生かした、並列空間光情報処理が次世代の情報処理通信技術として注目されている。通信デバイス研究室では、こうした光を用いた新たな通信システムを実現するための要素技術として、半導体発光素子の高速・高効率化の研究を進めてきた。 バンド間自然放出過程を用いた発光素子の応答の高速化は、不純物原子を発光領域に添加(ドープ)して多数キャリア濃度を増加させることにより図られる。 これは発光再結合率が電子とホールの濃度の積に比例することに基づいているが、不純物原子のドープ量が増すと共に発光領域に光を発生しない再結合(非発光再結合)中心が生成され、発光効率が低下してしまうという問題点があった。この解決のために、障壁層のみに不純物をドープすることによって非発光再結合中心の分布領域とキャリア再結合領域を空間的に分離した量子井戸の選択ドープ構造を発光層として利用することを考案し、非発光再結合中心の影響を受けずに高速・高効率化が可能であることを示した。本報告では、MBE成長GaAs/AlGaAs選択ドープ量子井戸構造における発光強度のドープ量依存性をフォトルミネッセンスで、キャリア再結合過程を時間分解フォトルミネッセンス応答、フォトルミネッセンス励起スペクトルにより調べ、井戸層内蓄積電子濃度、ディープ発光・非発光再結合中心の起源など選択ドープ構造の発光特性を左右する要因の解析を行い、発光効率低下の原因を明らかにすると共に、高速・高効率化のための構造最適化の指針を示した。