TR-M-0050 :2000.3.31

西村竜一, 宮里勉

剛球モデルに基づく遮音物体移動聴感の実時間生成

Abstract:音を遮る物体が聴取者の近傍にあり,その周辺には,他に音の聴取に強く影響を与えるような反射壁が存在しない場合を考える.この場合,2次反射や2次回折を無視することでモデルは極めて簡単になり,物体の形状を剛球と仮定することで,容易に解析解を得ることができる.高い仮想現実感を実現するためには,インタラクティブ性は欠かすことのできない要素であり,その意味において実時間動作は,仮想現実感関連技術にとって重要度の高い要求事項である.そこで,本研究では,この条件を満足しつつ,物体が近傍を通過した音感をユーザーに提示することが可能なシステムの開発を行った.このシステムにより,仮想環境において眼前を物体が通り抜けた時に,それに対応する反射や回折も考慮した音を実時間で合成して提示することができるようになる.また,これまでの視覚刺激偏重の仮想空間提示方法では,ディスプレイに映し出されていない地点における情報をユーザーが知覚することは不可能であったため,ディスプレイの端から物体が現れると突然それが出現したかのような印象を与えるという問題があった.しかし,このシステムを使うことにより,視野内外の物体の移動をシームレスに知覚させることが可能になるものと期待される.