TR-M-0018 :1997.3.31

山口徹也

動画像を用いた仮想環境の生成表示法

Abstract:仮想環境を構築する際に、背景シーンを含めて全てを3次元モデル化し、3次元コンピュータグラフィックスを用いて生成すると、リアリティが損なわれるばかりでなく、膨大な計算処理も必要となる。リアリティの向上のための計算コストが増大すれば、実時間でのシーン生成が困難となり、観察者との対話的な関係を実現することが困難となる。 従って、リアルタイムで、仮想環境内にリアリティの高いシーンを生成するために、仮想環境内の背景シーンを生成する際、実写の2次元動画像を積極的に利用することが有効である。しかし、実写の動画像をそのまま仮想環境の中にはめ込むだけでは、視点の移動に伴う運動視差が実現できず、リアリティの欠如が問題となる。そこで視点に追従して動画像の表示を制御する手法の検討が必要となる。本研究では、その手法の基本的機能である、動画像利用によるリアリティ向上と観察者の視点位置を考慮することによる運動視差の効果を実現するシステムを構築し、手法の有用性についての検討を行った。このシステムは、表示用ディスプレイに対して平行な視点移動と、表示用ディスプレイに対する前後の視点移動に対応可能である。 今回の検討で、観察者の視点の変化に追従して実写の2次元動画像を切り換えて表示する手法は、運動視差の効果を実現可能とし、リアルで効率的な仮想環境の構築に有用である見通しを得た。