Nobuyoshi KAIKI, Kazuya TAKEDA, Yoshinori SAGISAKA
Vowel Duration Control
using Linguistic Information
Abstract:自然な文音声を規則により合成するため、母音継続時間長の制御の精密化を図っ
た。これまで日本語の母音継続時間長について指摘されてきた制御要因に加え、新
たに、句構造や語彙等の言語情報が制御に及ぼす影響を調べるため、各母音に対し
て句内位置と形態素情報(品詞)を要因に加えて重回帰分析(数量化I類)を行った。分析
には、4名が発声した503文章のべ2012文章中の母音セグメント約43000サンプル
を用いた。この結果、従来主として単語音声の分析で指摘されてきた要因の文中にお
ける影響が定量的に明らかになった。また、新たに次の事柄が判明し
た。(1)従来知られている呼気段落よりも小さいアクセント句レベルで句全体の伸
縮、句末の伸長が行われる。(2)数詞、固有名詞等の重要な情報を担う箇所が伸長さ
れる。(3)拍タイミング等による影響は、隣接音韻のみならず2音韻前後にも渡る。
これら制御要因による推定精度を調べるため、全データを各人毎に2つのデータセッ
トに分け、各々のセットに対して評価した。この結果、分析に利用した母
音セットでは平均2乗誤差15.30ms(標準偏差の57.2%)、分析外母音セットに対し
て、平均2乗誤差15.84ms(標準偏差の59.2%)となり、規則の妥当性を確認できた。