野垣内出,飯田仁
対話における名詞句の同一性とその応用
Abstract:名詞句の同一性の理解は、照応として研究されてきた。これまで、照応の研究では、代名
詞(もしくは、ゼロ代名詞)とその先行詞が中心的な題材であったが、ここでは、名詞とその先
行詞について取り扱う。一般的には先行詞と照合のための情報は、代名詞より名詞の方が多い
が、反面、名詞-名詞の照応は、名詞-代名詞の照応に比べ、より"遠くの"先行詞を取ることが
可能である。したがって、解析すべき範囲は、代名詞の解析より広い範囲となる。このため、
誤った解析結果を得やすい。また、条件を満たす最も近いものが照応関係となり易いが、近接
した条件を満たす2つの名詞句でも、照応関係とならないものがあり、これらの理解のための適切
な判断が必要となる。
名詞と名詞の照応は、名詞の語義が言語によって異なることがあるため、言語ごとに異同
がある。このため、対話理解の応用として、機械翻訳を考慮した場合、対象言語において、あ
る名詞が対話中のどの名詞と同一であるかを解析する必要がある。
この報告では、対話におけるドメイン知識を用いた名詞句と名詞句の同一性の解析のため
の手法を示す。この手法は、近接した名詞句においても有効な解析を行う。また応用を示す。