TR-H-0259 :1998.11.16 ( Internal Use )

足立隆弘,駒木亮,山田玲子,森本健明,片桐滋,高田智子

インターネットを利用した音声のききとり公開実験

Abstract:1998年3月,アメリカ英語/r//l/の知覚に関してインターネットを利用した公開実験を開始した.本報告書には,実験開始に至る経緯,実験のシステム構成,実験内容等について記録するとともに,半年間の実働状況,得られた実験データの解析結果等,結果の中間報告も行う.さて,本公開実験を立ち上げる直接のきっかけとなったのは,講談社Blue-Backs「英語リスニング科学的上達法」の出版である.講談社の依頼に応じ,英語のききとりに関して,科学的な立場から本を出版することになったのが,1997年.本文は文部省メディア教育開発センター山田恒夫助教授が執筆し,ATRは,資料や技術提供等を通して支援することになった.その後,何度かの打合せのなかで,音声に関する現象やリスニング学習の説明を紙面のみで行うのは困難なので,CD-ROMを付録として添付することが決定した.また同時に,インターネットwebページも開設・活用することも決定したのである.この時点では,このインターネットWebページにどのような機能を持たせるか,どのように運営するか,未定の部分が多く,また,関係者は,上記の本を購入した人のみがその特典としてアクセスできるようなページを思い描いていた.その後,何度も話合いを持った.また,技術面でも様々な試行錯誤を繰り返した.その結果,ページをより魅力的なものとするため,書籍のサポートページではあるが,誰でも閲覧出来,また/r//l/リスニングに関する公開実験にも参加できるような形をとることになった.インターネットを利用した実験の実施は,以前から懸案中の課題でもあったため,一石二鳥の企画となった.詳細は本文に譲るが,「英語リスニング科学的上達法」は1998年3月20日に発刊し,現在第三刷,35,000部印刷を重ねている.公開実験webページは,開設から5ヵ月弱を経た1998年9月11日で12万件以上のヒットおよび公開実験への登録者数1300件以上を記録した.予想外の反響に嬉しい悲鳴をあげているのが正直なところだ.しかし,インターネットの性質上,質問メールアドレス(bb@hip.atr.co.jp)を設けたため,種々の質問メールが舞い込んでしまったのも事実である.成功した点も失敗した点も踏まえ,これらの経験を将来の研究活動に活かすため,「英語リスニング科学的上達法」の発刊と公開実験の立ち上げから半年経た今,システム構成や,結果,反響について本報告書にまとめることとする.本報告書では,第2章に「英語リスニング科学的上達法」の概要を,第3章に公開実験のシステム構成を,第4章にシステムの稼働状況を,第5章に送られたデータの解析結果について記す.また,付録には,本公開実験を紹介した新聞や雑誌の記事,「英語リスニング科学的上達法」の書評記事等を参考資料として併せて掲載する.