TR-H-0138 :1995.3.27

ー川誠

2次運動が示す運動視差および動的遮蔽の手がかりからの奥行知覚

Abstract:運動視差や動的遮蔽の手がかりに基づく奥行知覚の成立過程と運動知覚成立過程との関係について検討することが目的とされた.2つの実験において,これらの手がかりを1次運動およびいくつかのパタンの2次運動によって提示し,見かけの奥行方向と奥行量とが運動の種類によってどのような影響を被るかを調べた.1次運動とフリッカー2次運動によって運動視差と動的遮蔽を提示した場合,2つの手がかりが同じ奥行方向を示す条件では,視覚系が,これらの手がかりにしたがって見かけの奥行方向と奥行量とを決定していることが見い出された.それに対し,テクスチャー2次運動がこれらの手がかりを示した場合,運動に基づく刺激領域内の視覚的分節は成立したものの,これらの手がかりによる見かけの奥行量と奥行方向への効果は認められなかった.以上の結果は,運動視差,動的遮蔽からの奥行知覚成立過程は2次運動知覚の成立過程とは異なる運動表現の処理に基づいていることを示唆し,また,奥行知覚と運動知覚との間に乖離が有り得ることを意味する.