TR-H-0009 :1993.3.2

岩谷賢, 河原英紀

変換聴覚フィードバックの基礎検討

非定常ピッチ変換による発声ピッチの変動について

Abstract:発声時における聴覚系の寄与を明らかにするための方法として、聴覚的フィードバック経路に信号処理を挿入する「変換聴覚フィードバック」を取り上げ、その基本的性質の検討を行った結果について報告する。また、これらの検討の過程で確認した新しい聴覚フィードバック現象についても併せて報告する。 これまで聴覚フィードバックの研究の多くで用いられていた「遅延」処理は、発声過程への妨害が大きく、正常な状態での発話過程の検討には適していない。本検討では、まず、これらの効果についての追試を行い、同様な傾向が観測されることを確認した。 次いで、「ピッチ変換」処理を用いてかつ逐次的な追跡が不可能な速度で変換パラメタを変化させることで、より自然な状態に近い状況での自動的な過程を観測することを試みた。その結果、外から加えられたピッチ変換を打ち消す方向に、約150msの遅れで発声された音声が追従して変化する現象が、高い再現性を有して見いだされた。 なお、本報告は、1993年1月8日から2月26日にかけて、ATR人間情報通信研究所において行われた実習内容および結果の要約である。