TR-C-0152 :1996.3.15

原田英二

異常な状態への遷移の検出精度向上手法の検討

Abstract:通信ネットワークの高度化にともない多様なサービスの早期開発がもとめられており、そのために仕様の早期確定が必要である。仕様確定における重要な課題にサービス合成検証がある。これは、新規サービスと既存サービスを合成したときに発生する不具合すなわち競合を検出し、解消するものである。 サービス合成検証については、競合の一種である意味的矛盾に着目し、異常な状態への遷移を定義して、その検証手法を検討してきた[1]。異常な状態への遷移とは、合成サービスによって生成する状態遷移に被合成サービス(合成する前の各々のサービス)単独では生成されない状態があらわれることである。この検証手法は2つのサービスを機械 的に合成し、2つの被合成サービスと合成サービスの状態遷移を比較判定しながら、異常な状態を検出して設計者に提示するものである。 この検証手法によって2つのサービス仕様を合成したときに生じる意味的矛盾を機械的に検出することが可能となり、また、設計者が検証しなければならない合成サービスの状態遷移の数を大幅にしぼりこむことができた。 ただし、この手法によって検出される異常な状態には実際の競合に比べて冗長な状態、つまり、競合ではないものがあった。競合が必ず検出されないと設計支援手法としては意味がなくなるため、検出もれを生じさせずに、その競合でない状態の検出を機械的にできるだけ削除すること、すなわち検出精度の向上が課題であった。 本稿では、まず、合成検証の異常な状態への遷移について、従来の検出手法について説明する。次に、問題点である冗長な検出について発生原因の考察と原因に応じた対策を検討する。そして、従来の検出手法の改善手法を提案してその評価を行う。最後にまとめと今後の課題について述べる。