TR-C-0143 :1996.3.15 ( Internal Use )

中村宣孝,宮里勉,岸野文郎

把持動作におけるターゲット予測

Abstract:臨場感通信会議システムでは、仮想物体を協調して直接操作することができるが、人間の視覚、体性感覚等に関する性質を活用し、ユーザの意図理解に基づいてシステムによるユーザの支援が可能であれば、操作性向上につながり、より高度なユーザインタフェースを備えたシステムとなりうる。本論文では、物体把持動作を取り上げ、各動作が人間の意図、思考を反映するものと考え、手動作情報や視覚情報を利用した把持対象(ターゲット)の事前推測、さらには人間の意図理解への基礎的な試みとして、仮想物体を対象とした人間の把持動作を分析する実験を行った。その結果、物体重心方向と指先重心方向のなす角度はほぼ一定で、さらに、これは物体の形状や大きさ、向き、視距離に依存しないことがわかった。また、手に設定した仮想把持線と物体の慣性主軸のうちの長軸との相関が高いことがわかった。以上の結果を利用したターゲット予測の可能性を確かめるため、指先重心の方向角度をFisher分布でモデル化し、そのモデルに基づいた簡易なターゲット予測法を検討した。その結果、高い識別率でのターゲット予測、約40%の動作時間の短縮が実現され、操作支援への有効性が明らかとなった。