TR-C-0133 :1996.3.1

小林吉純

通信サービスのモデル化と自然言語による仕様記述の理解法

Abstract:電話サービスに代表される通信サービスは情報化社会の進展に伴い,益々多様化する傾向にある.通信サービスを提供する通信技術者の数には限りがあり,またサービス提供側が利用者の要求を的確に把握することも難しいため,多様化する要求に迅速に応えようとすると,利用者自身によるサービス要求記述が不可欠である.ここで利用者とは企業や家庭での末端利用者を指すのではなく,企業内のシステム管理者や通信事業者の営業担当を意味している.これらの利用者が通信サービスの定義を行う走りとなるものがIN(Intelligent Network)サービスでのカスタマイズサービスとして既に現れている.そして,この傾向はマルチメデイアサービスが進展すると,益々顕著になると予想される. 利用者に要求記述を行わせる場合の言語としては,普段から馴れ親しんでいる自然言語が最良である.しかし,自然言語は記述に多様性や曖昧性があり,仕様記述の不正確さを招いたり,機械処理に不向きであるなどの問題がある.このため,仕様の検証やプログラムの生成のためには,これ迄形式言語が用いられてきた.ところが,形式言語は非専門家にとっては記述性,読解性の点で,難があり,やはり,自然言語を導入しつつ,機械処理性も向上させたい.本研究の目的もここにある. 当研究所においては,これ迄プロダクションルールに基づく仕様記述言語STRを開発し,STRで記述された仕様の検証,仕様からのプログラム生成の研究を行ってきた.そのため,自然言語で記述された仕様をSTR記述に変換できれば,自然言語による仕様の検証や自然言語記述からのプログラム生成が実現されることになり,利用者の要求に合致した通信サービスを効率的に開発することが可能になる.このような観点から,本研究の目的は以下のようにまとめられる. ① 自然言語を用いて,利用者自身が要求を的確に記述することができる記述法,記述支援法を確立する. ② 記述された要求仕様を解釈し,検証やプログラム生成の可能な形式言語STRへ変換する技術を確立する.