TR-C-0132 :1996.3.1

世良孝文

分散ネットワークにおける通信ソフトウェア仕様の生成法

Abstract:近年の通信ネットワークの高速化,大容量化の進展に伴い,これらネットワークを使った通信サービスも高度化が急速に進みつつある.また,通信端末の普及と高機能化の影響により,通信サービスも個人別の要求を満たすためのサービス,すなわちパーソナル化指向の通信サービスの実現が望まれている.このような要求のパーソナル化への対応の一つとして,通信サービスのユーザ自身が欲する通信サービスを定義することが可能になることは,ユーザがイメージし要求する新しい通信サービスを提供するための一つの方法である. 一方,通信サービスを提供する側からみると,ネットワークの高速化,大容量化の進展にともない,より高度な通信サービスを提供するための環境が揃ってきた通信サービスが実際にネットワーク上で稼働する為には,新たに提供される通信サービスの仕様が既存のサービスに悪影響を与えないなどサービス仕様自身の正しさを保証しなければならないだけでなく,実際のネットワーク上に分散された各々のノードの通信ソフトウェアに変換してやらなければならない.通信サービスを実現するネットワークを構成する各々の分散ノードの通信ソフトウェアを誤りなく実現するには,通信サービスの設計者がノード間の同期など高度なネットワーク内部の知識に精通している必要がある.通信サービスは,新たにサービスが追加されることは多いが,既存のサービスが削除されることはほとんどなく,時代の流れとともに通信ソフトウェアは肥大化してきた従来から高度な知識を持った専門技術者によって設計が進められてきたが,そこでも高度化,多様化の影響を受け人手ですべての設計上の誤りを取り除くために多大な労力を必要とするようになっている機械的にサービス仕様から通信ソフトウェアの生成を支援したり,自動生成を行うことは,それらの問題に対する解決策の1つである. 我々は,通信サービス仕様から通信ソフトェアを自動生成する研究の一貫として,機能が分散された複数のノードからなるネットワークにおいて,各々のノード毎の通信ソフトウェアに分割する手法について研究をすすめている.本稿では,アーキテクチャの違いを,論理的な機能の物理配置として定義し,ネットワークの外部から認識可能な端末の状態遷移として定義された通信サービス仕様から,ネットワーク内の機能の異なる複数のノードにおける通信ソフトェアを自動的に分割して生成する手法について述べる.