北村喜文
階層的空間表現を用いた3次元物体間の実時間インタラクションに関する研究
Abstract:本論文では,完全な仮想現実のシステムを構築するための要素技術として,3次元
物体間の受動的相互作用,能動的相互作用,人為的相互作用の3種類の相互作用に
ついて述べる.まず,3次元物体間の受動的相互作用について,並進と回転を含む
運動をする複数の3次元物体間の衝突面を,octreeを用いて効率的に検出する方法
を提案する.手法は,静止物体と運動物体を区別することなく,複数の複雑な形状
の移動物体が存在する空間中で,連続な運動中に生じる衝突物体を離散時刻の検査
によって見逃すことなく選びだし,さらに効率的に衝突面を特定することができる.
物体の形状としては凸と凹両方の形状を許し,かつどちらも特別扱いしない.続い
て,並列計算機を用いることによって実時間で,複雑な形状の運動物体間の衝突面
を検出する方法について述べる.
次に,3次元物体間の能動的相互関係について,移動対象物体(ロボット),静止
障害物,移動障害物の環境中の全ての物体を,その運動可能性を区別することなく
同一の枠組(octree)で表現する効率的な経路計画の方法を提案する.手法は,簡単
なアルゴリズムでも効率的に3次元の動的環境での経路が発見されることが特徴で
あるが,それを支える技術の1つとして,並列計算機を用いて,回転と並進を含む
任意の運動にともなってoctreeを実時間で更新する方法について述べる.
最後に3次元物体間の人為的相互作用について,実時間衝突面検出の方法によっ
て検出された衝突面を用いることにより,複雑な形状の物体の接触面を動的に決定
し,この面で物体の視覚的な運動を拘束する仮想物体操作を補助する方法について
述べる.本手法は力フィードバック機構など特別なハードウエアを用いる必要がな
く,自然なユーザインタフェースを提供する.これにより,操作者は仮想物体の配
置操作を精度良く,また効率的に遂行することができる.